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令和7年2月定例会の知事議案説明要旨
当初提出議案(令和7年2月4日)
本日ここに、第9回定例県議会を招集いたしましたところ、議員の皆様におかれましては、ご参集いただき、厚くお礼申し上げます。
このたびの議会は、私にとりまして任期最後の定例県議会であります。
今日まで、県民の皆様、さらには県政という車の両輪の一方であります県議会の深いご理解とご協力をいただきながら、県政推進に全力で取り組んでまいりました。改めて厚くお礼を申し上げます。
私が知事に就任いたしましたのは、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、前知事が病気のため任期半ばで辞任されるという非常事態ともいうべき状況においてであり、新型コロナの脅威から県民の皆様の命を守る、このことに専念してまいりました。
いわゆる「福岡方式」によるコロナ対応病床の確保、ワクチンの円滑な接種など、感染拡大の防止や医療提供体制の強化、さらには、制度融資による資金繰り支援など厳しい経営環境にある事業者の皆様の事業継続支援をはじめ、高プレミアム率の地域商品券の発行による地域の需要喚起、地域経済の活性化など、様々な対策に全身全霊を傾けてまいりました。
特に、外出自粛や飲食店の時短営業などの厳しい措置を県民及び事業者の皆様にお願いせざるを得なかったことは、苦渋の決断でした。
その中で、第6波のまん延防止等重点措置においては、国が延長の方針を示す中、措置の効果と社会経済活動に与える影響を勘案し、専門家や医療関係者・団体、市町村等の意見や、今後の病床使用率などのデータを踏まえ、国と鋭意協議を進め、解除を要請いたしました。その結果、令和4年3月には、他県に先駆けて、まん延防止等重点措置の解除に至りました。
そして、一昨年5月、感染症法上の位置付けが2類相当から5類に移行しました。8回にわたる流行の波を乗り越えることができましたのも、ひとえに、感染防止対策にご理解、ご協力をいただいた県民・事業者の皆様、ワクチン接種や病床の確保をはじめ、医療現場の最前線でご尽力いただいた医療関係者の皆様、様々な現場で社会を支えていただいた全ての皆様のおかげであり、深く感謝申し上げます。
また、令和6年能登半島地震及びその複合災害となった令和6年奥能登豪雨をはじめ、度重なる自然災害が全国各地で発生しています。本県でも毎年のように発生した豪雨災害への対応にあたっては、県民の皆様の命を守り、事業者の皆様のなりわい、事業の継続を図ることを第一に、速やかな復旧・復興と、防災・減災対策に取り組んでまいりました。
就任以来、こうした緊急事案に対処しながらも、将来を見据え、3つのチャレンジとして公約に掲げた、「次代を担う『人財』の育成」、「世界から選ばれる福岡県の実現」、「ワンヘルスの推進」を着実に進めてまいりました。
まず、「次代を担う『人財』の育成」では、市町村や地域団体、企業などと連携し、子どもたちが未来に向けてチャレンジする力を養う「未来子どもチャレンジ応援プロジェクト」を始動しました。この中で、様々な社会課題の解決にチャレンジする高校生に対して活動資金の助成やアドバイザーの派遣を行い、そのチャレンジの実現を支援しています。
また、子どもたちが県内どこでも充実した教育環境の下で学ぶことができるよう、県立学校への1人1台タブレットの配備を実現し、その取組を私立学校まで広げました。
さらに、世界の舞台で活躍するためには、実践的な英語能力を身に付ける必要があります。このため、高校生を対象とした異文化理解教育プログラム「Stanford e−Fukuoka」を開講しました。
加えて、海外の企業県人会の協力を得て、県内大学生等が海外でのビジネスの現場を体験するプログラムを開始しました。
女性の活躍を一層推進するため、「ママと女性の就業支援センター」を開設し、子育て中、非正規雇用、求職中の女性に向けて、個別相談から就職あっせんまでの一貫したサポートを行っています。また、働く女性の交流の場「福岡キャリア・カフェ」を開設し、さらに県内各地に拡大しています。このほか、県制度融資に女性向け創業資金を設け、起業する女性を応援しております。
日本財団と連携し、国立国会図書館の蔵書のデジタル化を行う「就労支援の場」を県内3か所に開設し、複数の障がい者施設を利用している方と、ひきこもりなど働きづらさを抱えた方が共に働ける全国唯一の「福岡方式」として、高い工賃を実現しています。
また、障がいのある方の収入向上や社会参加を推進するため、アート作品のレプリカをレンタルする「まごころアートFUKUOKA GALLERY」を開始し、官公庁、企業等の皆様にご利用いただいております。
スポーツ分野では、パリ2024オリンピック競技大会で「タレント発掘事業」の修了生から初のメダリスト2名が誕生しました。一昨年度からは、この対象をパラスポーツ分野に拡大し、「フクオカ・パラスター・プロジェクト」をスタートいたしました。
文化芸術活動を促進するため、小中学生を対象に、楽器演奏の楽しさを学ぶ「福岡ジュニアオーケストラアカデミー」を開講するとともに、若手芸術家が地域住民と交流しながら創作活動を行う「アーティスト・イン・レジデンス」などの取組を実施しています。
半導体人材の育成は喫緊の課題です。これを強力に推進するため、一昨年8月に「福岡半導体リスキリングセンター」を開設し、これまで9000人を超える方が受講され、中小企業の皆様から大変ご好評をいただいています。
本県農業を牽引する農業経営者を育成するため、農業大学校のカリキュラムを刷新し、ロボットトラクターやDX対応型ハウスを用いたリカレント教育を実施しています。
次に、「世界から選ばれる福岡県の実現」では、半導体、自動車、水素の分野において、新たに「グリーン成長プロジェクト」を推進しております。
半導体分野では、半導体の「後工程」世界最大手である、台湾のASE社が北九州市への進出計画を進めており、第2位のシェアを誇るアメリカのアムコー・テクノロジー社は国内初の研究開発拠点を開設、三菱電機はSiCパワー半導体新工場を建設するなど、企業の進出や設備投資が活発化しています。
自動車分野では、トヨタバッテリーが苅田町に、日産自動車が北九州市に、それぞれ次世代の蓄電池工場を建設し、生産を行うことが決定しました。また、全国初となる使用済EVバッテリーの資源循環システムの「福岡モデル」の構築も進めています。EVの心臓とも言える蓄電池の工場が本県に立地することにより、「先進モビリティ」の一大生産拠点の実現に向けて、新たな時代が幕を開けました。
水素分野では、国による支援を獲得するため、「北九州市響灘臨海エリア」を中心とした水素大規模拠点の指定、さらには、商用FCモビリティ普及と水素ステーション整備を推進する重点地域の指定を目指しています。
バイオ分野では、令和3年に国の「地域バイオコミュニティ」の第一号に認定され、大手製薬企業とのライセンス契約を締結したエディットフォースをはじめ、株式上場、資金調達に成功するバイオスタートアップが次々と生まれております。
令和3年から現在までの製造業等の企業誘致実績は、投資計画が明らかにされていないASE社、トヨタバッテリーの蓄電池工場を除いても217件となっており、新たに1兆円を超える投資と約9000人の雇用が見込まれます。
加えて、国際金融機能誘致に向けて、九州経済連合会、福岡市とともに「TEAM FUKUOKA」として、香港やシンガポール、台湾等の金融関係企業33社の誘致に成功し、昨年6月には、政府から「金融・資産運用特区」に選定されました。
スタートアップの支援では、一昨年、米国ボストンを訪問し、現地の投資家や製薬会社との関係を強化するとともに、CIC東京に県のオフィスを開設し、投資家や起業家とのネットワークを構築しております。
また、「アトツギベンチャー」「サッシンベンチャー」をはじめ、地域で頑張る中小企業の挑戦を後押ししています。
農林水産分野では、海外のバイヤーの産地招へいや、海外のレストランにおける福岡フェアなどを実施し、県産農林水産物の輸出拡大に取り組んでいます。
また、大豆の「ふくよかまる」や、梨の「玉水」といった、消費者や生産者のニーズに対応できる、高付加価値の新品種の導入を進めてまいりました。
観光産業の振興では、本県としては25年ぶりに「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」を開催し、併せて県内周遊バス「よかバス」の運行を始めました。国内外からの誘客に取り組んだ結果、本県には356億円の経済波及効果をもたらしました。
また、全国初の「FUKUOKAサイクリングツアーコンシェルジュ」を開設し、国内外のサイクリングツアーの呼び込みを図っています。
県内在住外国人の皆様の「働く」「学ぶ」「暮らす」を支えるため、都道府県としては初めて、県と国等の専門機関が一体となった相談窓口「FUKUOKA IS OPENセンター」を開設し、生活や就労、在留資格など様々な相談にワンストップで対応しています。
スポーツの分野では、一度は幕を下ろした伝統ある福岡国際マラソンを、関係者のご協力を得て、新たな大会として開催しました。また、「バレーボールネーションズリーグ」や「WTTファイナルズ」など、様々な大規模国際大会を福岡県へ誘致しました。
本県の文化芸術活動をより一層活性化し、次世代につなげたいという思いを込めて、「ふくおか県芸術文化祭」をスタートしました。若者をはじめ、多くの県民の皆様に、伝統芸能をはじめ多彩な文化芸術を楽しんでいただいています。
次に、「ワンヘルスの推進」では、みやま市から建設地を無償譲渡していただき、全国初となる「ワンヘルスセンター」の令和9年度中の供用開始に向けて整備を進めています。また、県立四王寺県民の森を「ワンヘルスの森」として整備しています。
ワンヘルスの理念に沿って生産された農林水産物や加工品を認証する「福岡県ワンヘルス認証制度」を創設し、認証品目は400品目、認証を取得した農林漁業者は1万1000経営体を超えました。
教育関係では、昨年度から、全ての県立高校においてワンヘルス教育を実施するとともに、今年度からは、義務教育にも広げています。
さらに、FAVA会長であった藏内勇夫議員のご尽力もあって開所した「FAVAワンヘルス福岡オフィス」との連携を図りながら、ワンヘルスの取組を国内外に発信しています。一昨年4月、ハワイ大学とワンヘルスの推進に関する覚書を締結したことを皮切りに、昨年は、ハワイ州と覚書を、ハノイ市と共同宣言を、バンコク都と基本合意書を締結しました。
このように、3つのチャレンジは着実に進展しているものと考えておりますが、私が目指す福岡県づくりは、まだ道半ばであります。今ここで歩みを止めるわけにはいきません。
現在、我が国は、外を見れば、安全保障、外交、経済などの分野において、かつてなく厳しく、かつ混迷する国際情勢の中におかれています。
そして、内を見れば、30年間続いたデフレからの脱却、そのための賃金と物価の好循環の実現、急速に進む少子高齢化と人口減少への対応、大規模自然災害からの復旧・復興、今後発生する可能性のある新興感染症への対応など、非常に複雑かつ困難な、先送りできない課題に直面しています。
こうした課題に真正面から取り組み、県民の皆様の命を、健康を、生活を守ることを第一としつつ、福岡県を飛躍・発展させてまいります。
そして、福岡県に暮らす誰もが、人権が尊重され、性別や年齢、国籍、障がいの有無、こういったことにかかわらず、輝き、活躍することができる、「本当にここに住んで良かった」と笑顔で言ってもらえるような、心豊かで美しい福岡県にしていくため、私の持てる力の限りを尽くしてまいる覚悟です。
さて、本日提案いたしております令和7年度予算は、知事選挙が行われるため、暫定予算によることとしております。
今回の暫定予算は、4月から7月までの4か月間に必要な行政運営経費のほか、県民の安全・安心、地域活性化のために必要な経費を計上することといたしております。
社会保障費につきましては、国の制度改正や対象人員の変動等を見込んで必要額を計上しております。
公共事業費は、上期の契約額の確保に配慮し、全体として前年度当初予算額の2分の1を上回る事業費を計上しています。
災害復旧費は、復旧計画に基づく所要額と合わせて、新たな災害に備えた応急復旧費を計上いたしております。
以上の方針に基づいて編成いたしました暫定予算は、
一般会計で、9669億5700万円余、
特別会計の総額で、2386億7600万円余、
企業会計の総額で、219億5600万円余の規模となり、一般会計の対前年度当初予算比は45.4%となっております。
一般会計の歳入につきましては、国庫支出金、県債などの特定財源のほか、県税、地方交付税などを計上いたしております。
次に、歳出予算の主な項目についてご説明申し上げます。
まず、総務部では、15時間先までの災害リスクを分析・予測するシステムを新たに導入し、県民の皆様の早期避難を支援します。
県庁外来駐車場を来庁者以外にも開放し、土日祝日の利用もできるようにした上で、合わせて有料化するため、駐車区画の整備等を行い、県民の皆様の利便性向上を図ります。
企画・地域振興部では、「大阪・関西万博」に訪れる国内外の来場者を本県に誘客するため、「食の王国福岡」をテーマに、博多和牛や天然マダイ、八女茶等の農林水産物や県産酒、観光の魅力を発信するとともに、7県合同で九州の食や観光のプロモーションを実施してまいります。
平成筑豊鉄道沿線における今後の地域公共交通のあり方を検討するため、今年度設置した「平成筑豊鉄道沿線地域公共交通協議会」を引き続き開催するとともに、鉄道の利用状況等に関する調査を実施します。
日田彦山線沿線の地域振興のため、芸術家による創作活動を通じた地域住民との交流などの取組や、東峰村、添田町が地域の実情に合わせて行う取組を支援します。
人づくり・県民生活部では、住宅地に出没する野生のサルによる人的被害の発生及び被害拡大を抑止するため、追い払いや捕獲に用いる道具を新たに配備する市町村に対し緊急に助成するとともに、「福岡県鳥獣被害対策システム」にサルの出没情報を県と市町村に通知する機能を追加し、住民への迅速な注意喚起を行ってまいります。
大学におけるワンヘルス教育を推進するため、県が作成したワンヘルス教育プログラムの実証・改善を実施し、県内大学における導入を促進してまいります。
2028年に開催される世界卓球選手権団体戦の本県での開催を実現させるため、本年5月にカタール・ドーハで開催される国際卓球連盟年次総会において誘致活動を実施します。
保健医療介護部では、人、動物、環境の各分野に関する一体的な調査・研究を行うワンヘルスセンターの中核施設として、保健環境研究所の整備を着実に進めてまいります。
ワンヘルスの理念や実践の必要性に加え、本県の先進的な取組を世界に向けて発信するため、「大阪・関西万博」におけるテーマウィーク「地球の未来と生物多様性」の期間中に出展し、著名人によるトークショーやパネルディスカッション等を実施します。
福祉労働部では、未来の保育の担い手を確保するため、高校生等に向けて保育現場の魅力をインフルエンサーが伝える動画を作成、配信するとともに、高校生等が参加しやすい夏休みにフェアを開催するほか、保育実習の充実に向けた受入施設担当者向けの研修を実施します。
産前産後の家事・育児に対する負担を軽減するため、妊娠されている方や生後1年未満の赤ちゃんがいる方に対し、家事・育児をサポートするヘルパーの利用を支援します。
新生児検査を充実し、疾患の早期発見により発症を防止するため、先天性代謝異常等検査の対象に重症複合免疫不全症及び脊髄性筋委縮症に係る検査を追加します。
障がいのある方の収入向上を支援するため、日本財団と連携し、国立国会図書館の蔵書のデジタル化を行う「就労支援の場」を、新たに4か所目として、桂川町に開設します。
環境部では、県有施設への太陽光発電設備の導入を計画的に進め、脱炭素化に取り組んでまいります。
ワンヘルスセンターに、生物多様性保全に関する研究とワンヘルス教育を実践する体験学習を行うため、里地里山を再現した屋外エリアを整備します。
商工部では、中小企業の資金繰りを支援するため、県制度融資の融資枠を引き続き十分に確保し、一層の経営安定を図ってまいります。
新たなスタートアップ支援拠点「グローバルコネクト福岡」を「CIC Fukuoka」に開設し、CICと連携して、投資家や企業とのビジネスマッチングを創出するピッチイベントや海外展開を目指す企業を対象としたオンラインセミナーを開催し、県内スタートアップの成長を強力に支援します。また、国内外で活躍する著名な起業家等を招へいしたオープニングイベントも合わせて開催します。
閑散期の平日における観光誘客を促進するため、県内に宿泊する観光客の旅行代金等の割引支援を行います。
農林水産部では、高収益型園芸農業の振興を図るため、パイプハウスや高性能省力機械等を整備する認定農業者及び農業法人等に対し助成します。
ワンヘルスセンターの中核施設となる、家畜、野生動物、愛玩動物の保健衛生に一元的に取り組む動物保健衛生所の整備を着実に進めてまいります。
そのほか、農業水利施設、林道、治山、造林及び沿岸漁場、漁港などの農林水産施設の整備を行います。
県土整備部では、自然災害を踏まえた緊急輸送道路や、福岡市、北九州市へのアクセス向上を図る道路網、産業振興や地域活性化の基盤となる基幹的道路網の整備を進めてまいります。
建築都市部では、道路の渋滞緩和や歩行者の安全を確保するため、市街地における道路拡幅やバイパス、歩道の整備等を実施します。
また、西公園において、博多湾や福岡都心部を全方位見渡すことができる展望台及び官民連携によるカフェ、レストランなどを備えた中央展望広場の整備により、にぎわいを創出してまいります。
警察本部では、複雑多様化する治安課題に的確に対応するため、社会人経験者を対象とした採用試験を新設するとともに、外国人犯罪、サイバー犯罪等の専門的な捜査を行う警察官の採用試験の実施回数を増やし、多様な経験、能力を有する警察官の人材確保を推進してまいります。
豪雨や地震等の大規模災害時に安全かつ迅速な人命救助を行うため、倒壊家屋等における要救助者の捜索を行うための機材を新たに導入するとともに、救命胴衣等を配備してまいります。
令和7年11月竣工予定の新たな福岡武道館の開館に併せ、記念式典やオープニングイベントを開催し、利用促進を図ってまいります。
教育委員会では、福岡県学力調査に英語を追加し、中学2年生を対象に実施するとともに、外国人と英語のみでコミュニケーションを図る宿泊体験活動を夏休みに実施し、中学生の英語力向上を目指してまいります。
情報・先端技術教育の充実を図り、県内成長産業を支える人材育成を推進するため、高校において県内企業・大学の見学、企業等による出前授業等を行います。
また、優れた技術や将来性を有する県内企業の魅力を紹介し、県内就職を促進するため、引き続き進路担当教員を対象とした研修会を実施します。
「福岡県立学校施設長寿命化計画」に基づく県立学校の大規模改築、グラウンド改修等を実施し、安全・安心と教育環境の向上を図ります。
以上が暫定予算の概要であります。
次に、令和6年度2月補正予算について、ご説明申し上げます。
今回の補正予算は、国の総合経済対策に基づく補正予算を最大限活用し、地域経済の成長・発展と持続可能性の追求、安全・安心の確保に取り組むとともに、ランピースキン病の被害を受けた畜産農家への緊急支援及び先端技術産業の振興に必要な経費を追加するものであります。
補正予算の額は、一般会計で899億6300万円余となり、その結果、一般会計の総額は、2兆2558億5200万円余となります。
一般会計の歳入は、国庫支出金及び県債などの特定財源のほか、「物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金」、地方交付税を計上しております。
補正予算の主な項目について、ご説明申し上げます。
まず、地域経済の成長・発展と持続可能性の追求であります。
第1は、地域経済の成長・発展です。
中小企業が取り組む生産性向上に資する設備導入や、経営革新計画に基づく新商品・新サービスの開発等に対して助成します。
また、業務効率化に資するITツールを導入する国の補助率に県独自の嵩上げを行い、事業者負担をさらに軽減します。
さらに、適切な価格転嫁のための取引先との交渉を支援する「中小企業賃上げ応援専門家」を派遣し、取引適正化の取組を推進します。
これらの取組を通じ、県内雇用の8割を担う中小企業が持続的に賃上げできる力を身に付けることを支援し、賃金と物価の好循環を実現してまいります。
多くのバイオスタートアップが本県で起業し、持続的に成長していく「福岡バイオエコシステム」の形成を一層推進するため、民間の創業支援施設を「福岡バイオコミュニティ認定施設」に認定する制度を創設するとともに、認定施設内における九州初のシェアラボ「福岡バイオコミュニティラボ(仮称)」の設置を支援します。
農業分野では、あまおうの生産量減少に歯止めをかけ、産地の維持・拡大を図るため、収穫ロボットの導入も見据え、経営規模の拡大に取り組むあまおう農家に対し、高設栽培施設の整備費を通常の補助率に上乗せして助成し、地域を牽引する、企業的経営に取り組む大規模あまおう農家を育成します。
オーガニック茶の海外需要に対応するため、本県が誇る八女茶について、オーガニック茶への栽培方式の転換を支援し、欧米への輸出拡大を目指します。
主食用米の価格高騰により、酒米からの作付転換の動きがある中、県産酒のGI認定に向け、県内の酒米生産を維持するため、価格転嫁の即応が困難な酒蔵に対し、主食用米と同等価格での酒米の仕入れに必要な費用を助成します。
農業共同利用施設の高機能化や統合を目的とした整備・撤去に対し、国の補助率に県独自の嵩上げを行い、助成することにより、施設を利用する農業者の経済的負担を軽減します。
低コスト耐候性ハウスの導入や、生産効率の改善を図る家畜飼養施設、高性能林業機械等に助成し、農林業の収益力を強化します。
消費者の購買意欲を喚起し、地域の商工業を下支えするため、県内各地域の商工会議所、商工会等が行う高プレミアム率の地域商品券の発行を支援します。併せて、地域事業者のデジタル化を力強く進めるため、デジタル地域商品券アプリへのクーポンの追加など、新たな顧客の開拓等の取組を支援します。
農業DXを推進するため、農業者や作業受託、機械レンタルを行うサービス事業者に対し、燃料及び農薬使用量の低減、省力化につながるスマート農業機械の導入を支援します。
第2は、社会経済の持続可能性の追求です。
直面する人手不足に対応するため、看護・介護助手の雇用や休憩室の設置などを支援し、医療従事者や介護・障がい福祉サービス従事者の勤務環境を改善するとともに、外国人介護人材の確保に向け、県内の複数の介護事業者が連携して行う海外での活動費用を助成します。
デジタルによる公的サービスの維持・強化に向け、医療、介護、福祉分野では、病院、診療所、薬局に対して電子処方箋の導入費用を助成し、重複投薬の抑制や医療機関等の業務効率化を推進します。
また、県の医療費システムを改修し、マイナンバーカードと連携させることにより、医療費助成受給者の利便性の向上を図ります。
さらに、介護サービス事業所や障がい福祉サービス事業所が行う介護ロボット、ICT機器の導入に対して助成し、従事者の負担軽減を図ります。
教育分野では、デジタル・半導体等先端技術分野を支える人材を育成するため、情報・数学等の教育を強化する学校のデジタル環境を整備するとともに、高校生に理工系分野の魅力を伝えるイベントを開催します。
また、中学生の英語力向上のため、AIアプリを活用した英語授業の実施・効果検証を行い、県内全域への普及・促進を図ります。
さらに、県立学校における無線アクセスポイントやネットワーク回線を増設し、GIGAスクール学習環境を充実します。
社会経済を支える基盤の充実を図るため、病院、有床診療所による病床数の見直しを支援し、地域の医療提供体制を維持・確保します。
また、個人防護具保管庫や検査機器等を整備する協定締結医療機関を支援し、新興感染症に対応してまいります。
さらに、道路の着実な整備や、木材の安定供給に向けた間伐及び路網整備を進めるほか、障がい福祉施設の整備を支援します。
次に、安全・安心の確保であります。
第1は、安全で安心な地域づくりです。
こどもがそれぞれの状況に応じた居場所につながることができるよう、こども食堂やフリースペース等をウェブで探すことができるこどもの居場所マップを作成し、市町村と連携してその活用を図ります。
遠距離の産科医療機関等で妊婦健診を受診する必要がある方に対し、通院に要した交通費の一部を助成します。
県立学校及び私立の小中学校、幼稚園、保育所等における給食の材料費上昇分を緊急支援し、保護者負担を軽減します。
第2は、防災・減災、老朽化対策です。
令和6年能登半島地震を踏まえ、発災直後から使用可能な組立式トイレの備蓄強化を行うとともに、避難所等の生活環境の改善のため、トイレカー・コンテナトイレを試験的に導入します。
また、木造戸建て住宅の耐震化を促進するため、耐震基準を満たしていない木造戸建て住宅の耐震改修や除却に対し助成します。
さらに、国指定文化財の防災対策を推進するため、防災対策事業に係る補助率を引き上げ、建造物等の所有者の負担を軽減します。
万が一の原子力災害に備え、UPZ(緊急時防護措置準備区域)内において孤立するおそれのある指定避難所の備蓄物資等を充実させるとともに、放射線を常時監視する電子式線量計を整備し、緊急時モニタリングを確実に行ってまいります。
緊急輸送道路や河川施設、砂防施設の整備、海岸保全施設の老朽化対策のほか、ため池等の安全対策を進めてまいります。
また、盛土等による災害の発生を防止するため、既存の盛土の分布状況の把握に向け、これまでの基礎調査を踏まえた現地調査を実施します。
次に、ランピースキン病の被害を受けた畜産農家への緊急支援であります。
ランピースキン病が発生した農場及び周辺農場がこれまで行ってきた生乳や子牛の出荷自粛、自主淘汰に要した費用や減収分に対し、県が独自に支援することにより、被害を受けた畜産農家の経済的負担を軽減します。
最後に、先端技術産業の振興であります。
水素関連産業の集積や脱炭素物流拠点の構築を目指し、大型FCトラック・バスに対応した本県初の大規模水素ステーションを整備する事業者に対し助成します。
新たな成長産業を創出し、地域経済の活性化を図るため、九州大学が産学官連携により設立するファンドへの出資を行い、大学発ディープテックスタートアップの創出を促進します。
以上が、補正予算の概要であります。
本日、ここに提案しております議案及び諮問は、ただいまご説明申し上げました予算議案22件のほか、条例議案18件、契約の締結に関する議案9件、経費負担に関する議案2件、その他の議案3件、人事に関する議案5件、福岡県教育委員会が行った退職手当の支給制限処分について知事への審査請求がなされたことに伴う県議会への諮問1件であります。
このうち、条例議案について、その概要をご説明申し上げます。
第1は、「福岡県一時保護施設の設備及び運営の基準に関する条例」の制定であります。その内容は、児童福祉法等の一部改正により、児童相談所に設ける一時保護施設の設備及び運営の基準について条例で定めることとされたことに伴い、必要な事項を定めるものです。
第2は、「福岡県警察関係手数料条例の一部を改正する条例」であります。その内容は、自動車の保管場所の確保等に関する法律の一部改正に伴い、保管場所標章交付等に関する手数料の規定を削除するほか、所要の規定の整備を行うものです。
そのほか、福岡県職員、公立学校職員及び警察職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例3件、建築士事務所の登録の手数料の額を改定する条例、福岡武道館の駐車場の有料化に伴い、その利用料金の上限を定める条例、関係法令の一部改正等に伴い所要の規定の整備を行う条例8件などであります。
以上、提出議案等の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。
追加提出議案(令和7年2月10日)
本日、追加提案いたしました議案は、20件であります。その内訳は、令和6年度補正予算議案12件、経費負担に関する議案8件であります。
まず、予算議案について、ご説明申し上げます。
今回の補正予算は、年度内に措置する必要がある経費を補正するものであります。
補正予算の額は、一般会計で973億3200万円余、特別会計で369億8900万円余をそれぞれ増額しております。また、企業会計では、流域下水道事業会計及び工業用地造成事業会計において補正を行っております。
その結果、令和6年度予算の総額は、一般会計で2兆3531億8400万円余、特別会計で1兆412億9000万円余となっております。
歳入につきましては、企業業績が堅調に推移していることなどにより、国、県ともに増収が見込まれることから、県税や地方譲与税、地方交付税を増額しております。また、歳出予算に対応した国庫支出金等の補正を行っております。
歳出につきましては、税収などの増により税関連市町村交付金を増額するとともに、来年度以降の普通交付税の精算及び臨時財政対策債の元利償還に対応するため、財政調整基金等三基金への積立てを行うほか、年度内の所要額がほぼ確定した経費を減額しております。
以上が補正予算の概要であります。
経費負担に関する議案は、漁港関係事業及び海の中道海浜公園事業について市の負担すべき金額を定めるもの並びに空港整備事業ほか5件について議決内容の一部を変更するものであります。
以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。
日程 | 提出議案| 諮問| 知事議案説明要旨| 代表質問 | 一般質問
採決結果| 可決された意見書・決議、採択された請願