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令和6年2月定例会の知事議案説明要旨

​当初提出議案(令和6年2月22日)

 議案の説明に入ります前に、発言をお許しいただきたいと思います。
 先月11日、職員が飲酒運転を行い、警察による任意捜査の後、今月16日、検察庁へ道路交通法違反の容疑で送致される事案が発生いたしました。
 本県では、飲酒運転は絶対にしない、させない、許さない、そして見逃さないという県民意識及び社会風土を定着させるため、県民の皆様のご協力をいただき、県を挙げて飲酒運転の撲滅に取り組んでいるにもかかわらず、率先して取り組み、県民の皆様に範を示すべき立場にある県職員が飲酒運転を行いました。
 このことは、県職員及び県行政の信用を著しく失墜させるもので、誠に遺憾なことであり、県民の皆様に対し深くお詫び申し上げます。
 関係職員に対しては、懲戒免職処分を行うとともに、総務部長通知を発出し、全職員に対し、飲酒運転防止のため、自らが取り組む方策を具体的に考えさせ、併せて、所属長による緊急の全員面談を行い、各職員が取り組む方策への助言・指導や注意喚起を行うことにより、改めて飲酒運転の撲滅に向けた取組を徹底させてまいります。
 今後とも、全職員に対し、勤務時間の内外を問わず、全体の奉仕者として自らの行動を厳しく律することについて周知徹底を図るなど、不祥事の再発防止に向けて努力を重ねることにより、県民の皆様の信頼を回復していく決意でございます。

 本日ここに、第5回福岡県議会定例会を招集いたしましたところ、議員の皆様におかれましては、ご参集いただき、厚くお礼申し上げます。

 このたびの令和6年能登半島地震によりお亡くなりになられた方々に対し、謹んで哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。
 県では、被災者の健康管理や避難所運営等を支援するため、被災地へ職員を継続的に派遣するとともに、県庁内に被災者住宅支援窓口を設置し、県営住宅の一時提供を行うなど、できる限りの支援を行っているところです。
 今後も、政府や全国知事会と連携を図り、被災地の一日も早い復旧・復興を支援してまいります。

 このたびの議会は、令和6年度当初予算をはじめ、多くの重要な案件についてご審議をお願いするものであります。
 議案の説明に先立ち、まず県政運営に関する私の所信を申し上げ、議員各位をはじめ、県民の皆様のご理解と、より一層のご協力をお願い申し上げる次第です。
 昨年を振り返ると、5月に、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが2類相当から5類になり、人、モノ、経済、社会が動き出し、活発化してきました。
 ようやく私たちの日常が戻りつつあると感じております。
 一方で、本県で発生した令和5年梅雨前線豪雨災害をはじめ、全国的にも度重なる自然災害が発生しました。
 また、いまだ収束を見せないロシアのウクライナ侵略、10月の武力衝突以降、緊迫が続くイスラエル・パレスチナ情勢、こうしたことに伴う国際的なエネルギー価格、原材料価格の上昇、さらには、3年に及ぶ円安を背景とした物価の高騰など、私たちは、依然として困難な事案に直面しております。
 こうした状況を鑑みたとき、県民の皆様の命と健康、生活を守ることを第一に取り組む、この考えは、知事就任以来、一貫して変わることはありません。
 県では、今年度から、「1000億円の人づくり」、「県内GDP20兆円への挑戦」、「安全・安心で活力ある社会づくり」の3つの柱のもと、施策を展開してまいりました。
 令和6年度は、この3つの柱に基づく施策を力強く実行し、福岡県の未来を見据え、成長・発展を加速前進させてまいります。
 この方針のもと、特に、「将来を守るサステナブル社会への改新」、「未来を拓くイノベーションの創発」、この2つの視点をもって、施策を展開してまいります。

 まず、「将来を守るサステナブル社会への改新」です。
 我が国、そして本県においても、平成28年以降、出生数は、毎年減少が続いています。
 こうした少子化の進行、これに起因した人口減少を背景に深刻さを増している人手不足への対応、さらには、物価上昇を上回る賃上げにより、実質賃金をプラスに転換し、経済を成長させる、賃金と物価の好循環の実現、こうした、私たちが直面している、先送りできない課題に真正面から取り組んでまいります。
 また、本県は平成29年以降、豪雨災害が毎年のように発生しています。
 さらには、令和6年能登半島地震のような震災、新型コロナウイルス感染症をはじめとする新興感染症、地球温暖化による気候変動など、私たちの暮らしは、様々なリスクに脅かされています。
 これを放置すれば、私たちの生活や企業活動を支える様々なサービスの縮小はもとより、社会の持続可能性が危ぶまれる事態になりかねません。
 このため、県民の皆様の将来を守るサステナブル社会を実現していくため、あらゆる手を尽くしてまいります。
 まず、少子化に歯止めをかけるため、こどもを安心して産み育てることができる地域社会づくりを進めます。市町村が実施する産後ケア事業を利用される方の負担を軽減するため、「出産・子育て安心基金」を活用し、県独自の補助制度を創設します。
 そして、近年、増加している不登校のこどもたちに多様な学びの場を提供し、誰一人取り残さない教育を実現します。
 深刻さを増す人手不足に打ち克つ、不断の働き方改革を推進します。
 「2024年問題」により、輸送能力の減少や人手不足の加速が懸念される物流や地域公共交通の分野において、職場環境整備に取り組む事業者に対する緊急支援を実施します。
 また、医療では、外科医のなり手不足や都市部への集中による地域偏在の是正に向け、遠隔手術指導を行う病院を支援します。
 30年続いたデフレから脱却し、賃金が増え、経済が成長する中で緩やかに物価が上がる、賃金と物価の好循環の実現には、県内雇用の8割を担う中小企業の持続的な賃上げが不可欠です。
 このため、「価格転嫁の円滑化に関する協定」を締結した13団体の連携による取組を強力に進めます。
 来年度は、福岡西方沖地震から20年です。
 地震により想定される被害調査を実施し、その結果を踏まえ、地震対策を強化します。
 また、AI技術や衛星データ等のデジタル技術を広く防災対策に活用し、災害対応力を強化してまいります。
 私たちの暮らしに大きな影響を与える新興感染症、地球温暖化に対応していくため、ワンヘルスの取組を推進します。
 ワンヘルスセンターの中核となる保健環境研究所の研究力の強化により新興感染症対策を進めるとともに、新たに家庭や企業における太陽光発電設備の共同購入や、藻場の再生による海のCO2固定化など、先駆的な地球温暖化対策に取り組みます。

 次に、「未来を拓くイノベーションの創発」です。
 人口減少、中でも生産年齢人口が減少していく中にあっては、労働生産性の向上や新たな価値の創出を図らなければ、経済は縮小し、諸外国との競争に遅れをとることとなります。
 このため、デジタルや先端技術、そして何より「人」が生み出すイノベーションの力で、労働生産性の向上や、企業、産業の付加価値生産性の向上を図り、世界に打って出る福岡県の未来を切り拓いてまいります。
 まず、半導体、EV・電池、水素など、明日の福岡の“産業のコメ”とも言うべき分野や、福岡県が人や企業から選ばれるために必要な取組に重点的に投資し、「福岡県の付加価値の向上」を図ってまいります。
 「半導体」について、TSMCの熊本進出は、400社を超える半導体関連企業が集積する本県にとっても大きなチャンスです。
 県内企業の取引拡大や新規参入、県外からの誘致を図り、「新生・シリコンアイランド九州」を牽引していく半導体「最先端実装」開発拠点化を推進します。
 「EV・電池」については、電気自動車の使用済みバッテリーの大量廃棄時代の到来を見据え、全国に先駆け、バッテリーリユース・リサイクルの福岡モデルを構築します。
 さらに、これまでの県内サプライヤーの電動化分野への参入に向けた支援を強化し、電気自動車、バッテリーの生産拠点の形成、ひいては、本県の電気自動車関連産業の発展につなげていきたいと考えております。
 「水素」については、北九州市響灘臨海エリアを中心とした水素大規模拠点の構築に向け、グリーン水素の供給量確保・需要拡大の両面にわたる取組を強化します。
 「先端技術の実装」については、県内のバイオベンチャーに対する海外展開支援や、昨年訪問したボストンに集積している投資家や製薬企業等との関係を強化し、福岡バイオエコシステムの形成を推進します。
 次に、イノベーションを創出する拠点形成、人づくりに積極的に取り組むとともに、新たな可能性を広げる多様な人材の活躍を支援します。
 「拠点」づくりでは、令和7年春、福岡に拠点施設を開設するケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)との連携を深め、スタートアップをはじめ中小企業の資金調達・ビジネスマッチング・海外展開を一体的に支援する県の新たな支援拠点の開設準備を進めます。
 今月16日、国が公募する「金融・資産運用特区」に対し、福岡市と共同提案を行いました。
 特区の認定を受け、我々の提案内容を実現することで、国際金融機能誘致にさらに弾みをつけたいと考えております。
 農業分野では、農業産出額の6割を占める園芸農業における先端技術の研究開発を強力に進めるため、新たに「園芸農業アドバンストテクノロジーセンター」を整備します。
 「人づくり」では、昨年1月、タイ・バンコク都との間で、起業家精神を持つ「アントレプレナーシップ人財」を育成する覚書を締結しました。
 この覚書に基づき、大学生や社会人を相互に派遣し、未来の経済発展や社会変革に貢献する人材を育成します。
 社会経済が持続的に成長・発展を遂げていく上で、女性の活躍は、不可欠であり、その支援に、さらに力を入れてまいります。
 起業する女性や、これまで女性が少なかったテクノロジー分野への女性の進出に対する支援を強化します。
 また、デジタル技術を活用して、障がいのある方の就労分野の拡大を支援します。
 さらに、海外人材の多彩なステージでの活躍を支援するため、生活や就労、在留資格等に係る相談体制を強化します。
 これら2つの視点をもった施策をはじめ、これまで取り組んできた様々な施策を力強く実行し、その「実」をあげることで、県民の皆様が安心して、たくさんの笑顔で暮らせる福岡県を実現してまいります。

 ここで、令和6年度当初予算及び令和5年度2月補正予算について、ご説明申し上げます。
 令和6年度当初予算は、国の総合経済対策を最大限活用した令和5年度12月補正予算及び2月補正予算と合わせた16か月予算として、一体的に編成し、切れ目のない対策の実施に取り組んでまいります。
 併せて、財政の健全化を着実に推進するため、「財政改革プラン2022」に沿ったメリハリの効いた予算編成を行いました。
 令和6年度当初予算の規模は、
 一般会計で2兆1320億6000万円余、
 特別会計の総額で1兆43億100万円余、
 企業会計の総額で436億8700万円余
 であります。
 一般会計の予算規模は、前年度当初予算比で3%の減となっております。
 次に、令和5年度2月補正予算について、ご説明申し上げます。
 今回の2月補正予算は、国の総合経済対策の効果を速やかに発揮させるために必要な経費等を措置しております。
 2月補正予算の額は、一般会計で140億4200万円余であります。これにより、令和5年度の一般会計の総額は2兆3671億3900万円余となります。

 16か月予算の概況について、ご説明申し上げます。
 予算の規模は、前年度の16か月予算に比べ2.5%の減となっております。
 歳出予算については、コロナ患者のための病床確保事業の減や県制度融資に係る預託金の減など行政施策費が、1103億円の減となっております。
 一方、公共事業費及び災害復旧費については、令和5年梅雨前線豪雨災害の復旧・復興対策等により、256億円の増となりました。
 また、社会保障費については、高齢化の進行に伴う医療費や介護給付費等の増により、156億円の増となっております。

 歳入予算については、法人2税及び地方消費税が堅調であることから、県税等が72億円の増となっております。
 一方、国庫支出金については、国の新型コロナウイルス感染症対策の減などにより、690億円の減となっております。
 また、県債については、令和5年梅雨前線豪雨災害の復旧・復興対策に伴う発行増などにより、85億円の増となりました。

 引き続き、歳出予算の主要施策について、ご説明申し上げます。
 最初に、「1000億円の人づくり」であります。
 「未来を担う人づくり」では、こども施策を総合的に推進するため、ワークショップ等において聴取したこどもや若者の意見を反映した「こども計画」を新たに策定します。
 こどもたちが世界に触れ、国際感覚を身に付けるため、世界各国・地域から招待したこどもたちと野球を通じた交流を行う「第30回世界少年野球大会福岡大会」を開催します。
 不登校になった生徒が安心して学び続けられる環境を作り、誰一人取り残さない教育を実現するため、生徒の多様なニーズに応じて特別な教育課程を編成できる「学びの多様化学校」の令和7年度の設置に向けて準備を進めてまいります。
 また、博多青松高校の通信制課程を県内どこに住んでいても履修できるよう、対面授業を北九州地域、筑豊地域、筑後地域の県立の協力校3校で実施します。
 県立特別支援学校の児童生徒が希望する進路に進めるよう、生徒のニーズに応じた就職先を開拓する就職支援サポーターを配置するとともに、外部専門家による進路サポートセミナーや就職ガイダンスを実施します。
 タイ・バンコク都との間で締結した覚書に基づき、大学生や社会人を相互に派遣し、両地域のスタートアップ企業への訪問やグループワークによるビジネスプランの立案などを通じて、起業家精神を持つ人材を育成します。

 「経済成長を支える人づくり」では、九州工業大学と連携して、「福岡半導体リスキリングセンター」に実機を使った実習講座を新たに導入することにより、半導体の設計や製造、評価まで一貫して見渡し、それぞれの分野で開発を監修できる中核人材を育成します。
 また、即戦力となる農業人材の育成を図るため、JAのトレーニングファームにおける実践研修用のハウス整備に対して助成するとともに、スマートグラスを用いた匠の技術伝承に係る研修等を実施します。
 農業分野の労働力不足の解消に向け、外国人労働者を北海道と本県の園芸農家で相互に受け入れることとし、北海道の農業の閑散期である11月から4月までの期間、JAが行う住宅確保等に対して助成します。

 「いきいきと輝く人づくり」では、企業における女性活躍を推進するため、若者の意見により経営者の意識改革を促すとともに、女性人材の計画的な育成に向けた人事・労務責任者に対する研修を実施します。
 また、福岡市内で開催している、働く女性の交流の場「福岡キャリア・カフェ」を、北九州、筑豊、筑後の各地域においても出張開催いたします。
 外出が困難な障がいのある方の就労を促進するため、遠隔で操作できる分身ロボットを活用し、店舗での販売体験等を通じた就労実証を行います。
 また、障がいのある方の就労が難しいとされている運輸分野において、就労が可能な業務を切り出し、就職前にARグラスを活用した模擬訓練を実施します。このことにより、障がいのある方の就職への心理的障壁を取り除き、就労分野の拡大を推進します。
 障がいのある方の絵画等の展示を行う「まごころアートFUKUOKA Gallery」を県庁ロビーに整備するとともに、県内各地で市町村と連携した展示会を開催し、障がいのある方の文化芸術活動を促進し、収入向上と社会参加を支援します。

 「社会を支える人づくり」では、「2024年問題」により、物流や地域公共交通の分野において、輸送能力の減少や人手不足の加速が懸念されております。
 物流分野では、トラック運送事業者が実施する、ドライバーの労働負担の軽減や拘束時間削減につながる取組に対して緊急に助成します。
 地域公共交通分野では、女性・外国人等がバス・タクシーのドライバーとして活躍できるよう、交通事業者による女性用更衣室の整備や配車アプリの導入等に対し、緊急に助成を行うほか、第2種自動車運転免許試験の学科試験を多言語で実施します。
 外科医の不足や地域偏在の是正に向け、若手医師がより高い技術を習得し活躍できるよう、症例数の多い都市部の医師によるリモートでの手術指導に必要な機器の整備に対し助成します。
 在宅医療・介護サービス利用者等による暴力やハラスメントから従事者の安全を確保するため、相談窓口を開設するとともに、利用者宅への複数人での訪問に係る費用を助成します。

 次に、「県内GDP20兆円への挑戦」であります。
 「県内経済発展を支える中小企業の振興」では、 中小企業の資金繰りを支援するため、県制度融資の融資枠を引き続き十分に確保し、一層の経営安定を図ってまいります。
 賃金と物価の好循環を実現するため、「価格転嫁の円滑化に関する協定」を締結した13団体が連携し、価格交渉スキルを向上させるセミナーの開催や、「中小企業賃上げ応援専門家」による伴走支援など、中小企業における取引適正化の取組を推進します。
 中小企業の人材確保や定着、育成を支援するため、「正規雇用促進企業支援センター」を改組し、「中小企業雇用環境改善支援センター」を新設します。
 また、非正規雇用労働者の正規化に向け、ITの知識や技能習得のための受講料無料のリスキリングプログラムを実施します。
 特定技能2号の対象分野拡大に合わせ、中小企業における外国人材の確保・定着をさらに進めるための改善点を指導する出張相談を新たに実施します。
 「福岡伝統工芸ファンクラブ」を創設し、SNSを活用した情報発信や生産者と交流する産地訪問ツアーを実施するとともに、欧州の文化の中心であるフランス・パリでテストマーケティングを行い、伝統工芸品の販路拡大を図ってまいります。

 「水素グリーン成長戦略の推進」では、北九州市響灘臨海エリアを中心とした水素大規模拠点の構築を目指し、国の実現可能性調査を実施する水素供給事業者を支援するとともに、水素需要の拡大を図るため、全国初のFC船運航事業に取り組む事業者に対し、燃料費の一部を助成します。

 「グリーンデバイス開発生産拠点の形成」では、半導体の設計、試作、評価・解析を一貫して支援する国内唯一の公的機関である「三次元半導体研究センター」に、企業版ふるさと納税制度を活用して最先端機器を導入することで、研究開発機能を強化し、県内半導体関連企業の取引拡大、県外からの企業誘致を図ってまいります。

 「北部九州自動車産業グリーン先進拠点の推進」では、県内サプライヤーの電動化分野への参入を進めるため、電気自動車メーカーの製造現場を視察し、個別商談を行う「電動化参入支援商談会」を実施するとともに、電動車部品や製造装置の製品開発に対し助成します。
 電気自動車の使用済みバッテリーの大量廃棄を見据え、EVバッテリーを県内でリユース・リサイクルする「福岡モデル」を全国で初めて構築するため、自動車メーカーやリサイクル事業者などが参画する官民の研究会を設置し、ビジネスモデルやロードマップを策定します。

 「先端技術産業の振興」では、県内の有望なバイオベンチャーに対し、米国での医薬品の薬事承認取得や海外展示会への出展を支援し、さらなる成長につなげてまいります。
 また、昨年訪問したボストンに集積している投資家や製薬企業との関係を強化するため、CIC本部でのピッチイベントや、現地ベンチャーキャピタルとの個別マッチングを行います。
 人工衛星をはじめとした先進的な宇宙関連機器のさらなる軽量化、高性能化等に取り組む中小企業の製品開発に対する補助制度を創設し、宇宙ビジネスの振興を図ってまいります。
 また、生成AIなど革新的な技術を活用した製品開発を行う事業者に対する助成を行うとともに、県内IT企業への就職を希望する学生を対象に、高度なプログラミング技術を教える「福岡県HACK―Academia」を開催することにより、IT産業の振興を図ってまいります。

 「スタートアップ・ベンチャーの成長促進」では、CIC Tokyoにおいて、投資家等に向けたピッチイベントを開催し、IT・ブロックチェーン・バイオ分野のスタートアップの資金調達を支援するとともに、女性起業家に特化したピッチイベントを行い意欲ある女性起業家のチャレンジを応援してまいります。

 「魅力あふれる観光産業の振興」では、急速に回復する国内外の観光需要を本県に着実に取り込むため、インバウンド誘客のさらなる拡大や、観光資源の魅力向上、観光振興の体制強化に全力を挙げて取り組んでまいります。
 いよいよ本年4月から、「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」が開催されます。キャンペーンでは、県内各地域の観光資源をバスで周遊する「よかバス」事業を新たに開始するとともに、宿泊代金の割引支援などに取り組み、全国からの誘客を促進してまいります。
 オーストラリアからの教育旅行の誘致やアメリカ合衆国向けの伝統工芸を活かした体験型旅行商品の造成、フランスでのインフルエンサーによる情報発信など、国や地域別に戦略的な誘客を進めてまいります。
 全国で初めて、サイクリングツアーの企画からレンタサイクルやガイドの手配までをワンストップで行う「FUKUOKAサイクリングツアー・コンシェルジュ」を開設し、国内外からのサイクリスト誘客を進めてまいります。

 「稼ぎ、夢のある農林水産業の実現」では、先端技術の導入による生産力の強化や選ばれるモノづくりを進めるとともに、農林水産物のブランド力向上に取り組み、稼げる夢のある産業にしてまいります。
 県が開発した大豆新品種「ふくよかまる」は、販売単価日本一となりました。この「ふくよかまる」への全面転換を加速するため、AIを活用した高性能選別機の整備に対し助成を行い、高品質な種子の安定供給を図ります。
 「博多和牛」の増産を目指し、和牛繁殖農家の規模拡大に向けた畜舎改修や、飼養管理を省力化する哺乳ロボットの導入を助成するほか、「はかた地どり」、「はかた一番どり」の供給拡大を図るため、食鳥処理場への全自動解体機の導入に対し助成します。
 県が開発した、糖度が高く食感がよい甘柿の「秋王」は、販売開始10周年を迎えます。これを契機に、首都圏でのPRイベントや高級レストランでのフェア等を展開し、認知度向上を図ってまいります。
 県内各産地から青果物を集約し首都圏への出荷を進める北九州市のストックポイントにおいて、レンタルパレットを活用し、積荷の上げ下ろし時間の短縮を図ることで、県産青果物の輸送力を強化してまいります。
 中山間地域の振興に向け、赤シソ等の薬用作物の生産拡大を支援するとともに、県内自生状況等の調査を実施します。

 「戦略的な企業・人材誘致の推進」では、企業誘致の受け皿として、苅田港新松山地区において第3期工業用地を造成するとともに、新たな土地造成を戦略的に進めるため、苅田港の長期的な構想を策定いたします。
 また、県南地域における企業誘致の受け皿となる、うきは西部工業用地を造成するための調査等を実施します。
 国際金融機能誘致では、これまでのアジアでの活動に加え、資産運用業やFinTech企業が集積する北米地域の展示商談会に出展するなど、「TEAM FUKUOKA」一丸となって誘致活動の強化を図ってまいります。

 「将来に向けた社会資本整備」では、産業振興、地域振興の基盤となる基幹的道路の整備や、いわゆる下関北九州道路の早期整備に向けた取組とともに、福岡、北九州都市高速道路の整備を進めてまいります。
 また、福岡空港の滑走路増設、北九州空港の滑走路延長を着実に進めてまいります。
 北九州空港においては、運送事業者及び荷主に対し、新たに半導体関連製品の輸送費の一部を助成することにより、貨物の集積を図り拠点化を推進いたします。

 「GX・脱炭素化の推進」では、家庭や企業における太陽光発電設備の導入を促進するため、購入費用を低減する共同購入の仕組みを構築します。
 この仕組みを活用し、太陽光発電設備を導入した家庭のCO2排出削減量を集約し、国の認証を受けたクレジットとして販売することで得られた収益を、今後の地球温暖化対策に資する取組に活用してまいります。
 海藻などに吸収されたCO2であるブルーカーボンを創出するため、産学官が連携して、藻場のCO2固定量を算出し、クレジット化するための技術開発や、保全活動で除去したウニを、地元産野菜を餌として養殖する取組を支援します。

 最後に、「安全・安心で活力ある社会づくり」であります。
 「災害からの復旧・復興、防災・減災、県土強靱化の推進」です。本県は平成29年以降、豪雨災害が毎年のように発生しています。道路、河川等の復旧や河川拡幅などの災害防止対策を推進し、被災地の復旧・復興に全力を挙げてまいります。
 流域全体で水害を軽減させる流域治水を推進するため、雨水貯留浸透施設として活用可能な施設ごとに、貯留量、対策効果などを示した「流域対策実施計画」を作成いたします。
 近年頻発する自然災害を踏まえた緊急輸送道路、河川、砂防施設の整備など、災害に強い福岡県の実現に向けた取組を進めてまいります。
 事前に飛行ルートを設定することで、目視できない場所でも自律飛行が可能な高機能ドローン及びAI分析ソフトを活用し、公共土木施設の迅速かつ効率的な点検を行います。
 南海トラフ地震や、新たに県内の主要活断層に追加された福智山断層等での地震により想定される被害調査を実施し、地域防災計画へ反映させるとともに、「ふくおか防災ナビ・まもるくん」に地震メニューを追加し、地震対策を強化してまいります。
 頻発する大雨災害に迅速に対処するため、SNSに投稿された被害情報をAIが分析し、瞬時に被害状況が確認できるシステム「Spectee」の活用を市町村に拡大してまいります。
 広域災害における災害ボランティア活動の円滑な支援体制を構築するため、県が主体となり、福岡県社会福祉協議会、Fネットとの連携による模擬情報共有会議を開催するとともに、福岡県社会福祉協議会が実施する災害ボランティアセンター運営のための研修・訓練を支援します。

 「物価・エネルギー高騰対策」では、物価上昇に賃金の伸びが追いついておらず、消費の拡大につながっていないことから、依然として厳しい状況にある商店街をはじめとした地域経済を下支えするため、商工会議所・商工会等が行うプレミアム付き地域商品券の発行を支援します。

 「ワンヘルスの推進」では、ワンヘルスセンターの中核施設である保健環境研究所及び動物保健衛生所の整備を着実に進めてまいります。
 ワンヘルスに関して学び、体験する場である「ワンヘルス体験学習ゾーン(仮称)」を整備するための基本構想を策定します。
 小学生を対象とした、生物多様性に関する教材の作成や、県内大学における教育プログラムの導入を促進し、ワンヘルス教育を推進してまいります。
 「アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)」の九州への早期設置に向け、九州大学と共同で、人獣共通感染症等の研究を実施するとともに、九州各県に共同プロジェクトへの参画を促してまいります。
 ワンヘルスの専門的な国際会議である「World One Health Congress」の2028年福岡開催を目指し、本年9月に開催される南アフリカ大会において誘致活動を実施します。

 「こどもを安心して産み育てることができる地域社会づくり」では、出会い、結婚、出産、子育て、仕事の各ライフステージに合わせて、切れ目のない支援を行います。
 妊娠前の健康管理を支援する「プレコンセプションケアセンター」を新設し、助産師と産婦人科医が、不妊や性感染症などの相談に対応してまいります。
 産後ケアの利用による母子の健やかな生活を支援するため、「出産・子育て安心基金」を活用した県独自の助成制度を創設します。
 具体的には、国の制度を活用して利用料を減免する市町村に対し、さらなる利用者負担軽減のための助成を行うとともに、市町村の負担を軽減するため、運営費の一部を助成します。このことにより、産後ケアの利用拡大を図ってまいります。
 児童相談所について、児童福祉司の大幅増員等を踏まえ、久留米及び宗像児童相談所の事務室の改修に取り組むとともに、大牟田児童相談所の一時保護所の改築に着手します。

 「ジェンダー平等、女性活躍の推進」では、男女共同参画社会の実現に向け、ジェンダー平等について考え理解を深めるための、県民企画による講演会を県内各地で開催します。
 起業する女性を応援するため、県の制度融資に、低利かつ保証料負担がゼロの女性向け創業資金を創設します。
 これまで女性の働き手が少なかった半導体、デジタル、自動車、ものづくり分野への女性の進出を促進するため、女性エンジニアの仕事の魅力を発信する動画を学校のキャリア教育で活用するとともに、女子中高生等を対象とした職場見学会を行う「福岡県ガールズテックプログラム」を実施します。
 改正食品衛生法の施行に伴い、営業許可が必要となる漬物製造において、女性農林業者等のグループが伝統の味を承継していくため、事業継続に必要な施設整備を支援してまいります。

 「誰一人取り残さない支え」では、生活上の問題を抱え、支援が必要な女性からの相談を受ける「福岡県女性サポートホットライン」を新設するとともに、自ら悩みを抱え込み公的な支援につながりにくい若年女性等に対し、NPOと連携し、公園での声掛け等による相談支援を実施します。
 本庁と全ての出先機関でろう者が安心して手話を使えるよう、手話通訳者とリモートで相談できるシステムを窓口に導入するとともに、全職員向けに手話を学ぶ研修会を実施します。
 障がいの有無に関わらず、全てのこどもたちが一緒に遊べるインクルーシブ遊具を県営公園に計画的に整備するとともに、誰もが自由な形で遊べる大屋根を備えた広場を筑豊緑地に整備します。

 「スポーツ、文化芸術の振興」では、九州初開催の「バレーボールネーションズリーグ2024福岡大会」に、県内の小学生を招待し、世界トップレベルの競技を間近で体感する機会を提供します。また、観戦客に本県の食や観光の魅力をPRするとともに、国内外にワンヘルスの理念を発信します。
 昨年に引き続き、国際サイクルロードレース「ツール・ド・九州2024」を開催するとともに、大会を盛り上げるため、BMXパフォーマンスや地域の名所・旧跡を巡り、食や文化を体感できるファンライドを開催します。
 また、高校生最大のスポーツの祭典である「全国高等学校総合体育大会」を北部九州4県で開催し、本県は幹事県として総合開会式を行うとともに、ハンドボールなど6競技7種目を開催します。
 文化の振興では、「ふくおか県民文化祭」を「ふくおか県芸術文化祭」に改称し、新たに学生の企画を取り入れたオープニングフェスを天神中央公園で実施するなど、若者をはじめ広く県民が多様な文化芸術を鑑賞・体験できるよう発展させてまいります。
 地域の文化芸術活動を担う市町村や公立文化施設の職員を対象とした文化芸術イノベーションアカデミーを新たに開催し、文化芸術事業の企画力向上を支援してまいります。

 「健康づくり、安心で質の高い医療・介護サービスの提供」では、生活習慣病予防のための減塩の取組「スマートソルティング」を引き続き推進し、「スマソる?弁当」の開発や量販店での販売を支援してまいります。
 また、「ふくおか健康づくり県民運動情報発信サイト」に、スロージョギング等の運動を促すための動画や記事を掲載し、「ふくおか健康ポイントアプリ」から誘導するとともに、運動習慣の定着のために市町村が行うケア・トランポリン教室への支援を引き続き実施します。
 新興感染症の発生に備えるため、保健環境研究所及び保健所において、検査機器の整備や検査試薬の備蓄を行うとともに、医療機関において精度の高い病原体検査が行える人材を育成します。
 新興感染症発生後、速やかに必要な医療提供体制を立ち上げるため、医療機関が行う個室病床や簡易陰圧装置等の整備に対し助成します。

 「地域の活力の創出」では、鉄道を利用する高齢者や障がいのある方などの利便性及び安全性向上のため、鉄道事業者による駅のバリアフリー化を支援する市町村に対する、新たな助成制度を創設します。
 まちの魅力の向上を図るため、市町村が民間と連携して行う、まちなかの公共空間の利活用に向けた取組を支援します。
 ももち文化センター、春日公園及びアクシオン福岡にネーミングライツを導入し、その収入を活用して、休憩施設の整備など、各施設の利便性の向上を図ります。

 「世界に向けた発信と交流の推進 FUKUOKA IS OPEN」では、県と福岡出入国在留管理局やJETRO福岡等の海外人材専門機関が一体となり、生活や就労、在留資格等に係る相談にワンストップで対応する「FUKUOKA IS OPENセンター」を開設し、海外人材の快適な暮らしを支援します。

 「快適な環境の維持、保全」では、西公園に、博多湾や福岡都市部を全方位見渡すことができる展望台や、広場を整備します。
 海の環境保全やプラスチックごみ削減への意識を高めるため、日韓海峡沿岸8県市道による海岸一斉清掃を新たに実施します。
 また、ビーチクリーニング大会を筑前海、豊前海、有明海の海岸3か所で開催し、大会で回収した漂着ごみにより制作したアート作品をクリスマスイベント等で展示する取組を新たに実施します。
 保健環境研究所が開発した大気汚染予測システムにAIを導入し、県内4地域別に3日先までの大気汚染物質の精度の高い濃度予測をホームページやSNSで発信します。

 「治安の確保」では、暴力団の壊滅に向け、引き続き徹底した取締りを行うとともに、犯罪組織や犯罪収益の実態を迅速に解明するための最新のスマートフォン解析機器や暗号資産追跡調査装置を導入し
急増する特殊詐欺に対する取締りを強化します。
 自転車の安全利用を促進するため、ヘルメット着用のイメージ向上をテーマとした動画を募集、配信するCMグランプリを開催します。
 渡辺通ゴールド免許センターを千代合同庁舎に移転し、講習室を拡大するとともに、授乳室や親子ルームを新設します。

 「行政DXによる県民サービスの向上」では、県立学校授業料や県営住宅家賃等をコンビニ窓口やスマートフォン等により24時間納付できるシステムを整備するとともに、県立高校における入学願書の提出や、授業料等の口座振替の申込みをオンライン化し、県民の利便性向上を図ってまいります。
 以上が、予算の概要であります。

 本日、ここに提案しております議案は、ただいまご説明申し上げました令和6年度予算議案20件及び令和5年度補正予算議案1件のほか、条例議案29件、専決処分したものについて報告し承認を求める議案1件、契約の締結に関する議案11件、経費負担に関する議案2件、その他の議案3件、人事に関する議案4件であります。
 このうち、条例議案について、その概要をご説明申し上げます。

 第1は、「福岡県特定都市河川浸水被害対策法施行条例」の制定であります。特定都市河川浸水被害対策法の規定に基づき、特定都市河川等の指定を行うに当たり、雨水貯留浸透施設等の標識の設置に関し必要な事項を定めるものであります。

 第2は、「福岡県都市公園条例の一部を改正する条例」の制定であります。公園施設として筑後広域公園内にバイシクルモトクロス場を整備することに伴い、その利用料金の上限を定めるものであります。

 そのほか、こども基本法の制定により、こども計画は、他の法令に基づき策定するこども施策に関する計画と一体のものとして定めることができるとされたことに伴い、本県のこども計画及びこども施策の総合的な推進に関し必要な事項等を調査審議させるため、福岡県こども審議会を設置することを定める条例、県立学校及び市町村立学校職員の定数を改める条例、関係法令の一部改正に伴い所要の規定の整備を行う条例17件などであります。

以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。

追加提出議案(令和6年3月1日)

 本日、追加提案いたしました議案は、21件であります。その内訳は、令和5年度補正予算議案11件、条例議案1件、経費負担に関する議案9件であります。

 まず、予算議案について、ご説明申し上げます。
 今回の補正予算は、年度内に措置する必要がある経費を補正するものであります。
 補正予算の額は、一般会計で637億2600万円余を減額し、特別会計で182億円余を増額しております。また、企業会計では、流域下水道事業会計及び工業用地造成事業会計において補正を行っております。
 その結果、令和5年度予算の総額は、一般会計で2兆3034億1200万円余、特別会計で1兆11億6500万円余となっております。

 歳入につきましては、企業業績が堅調に推移していることなどにより、国、県ともに増収が見込まれることから、県税や地方譲与税、地方交付税を増額しております。また、歳出予算に対応した国庫支出金等の補正を行っております。
  
 歳出につきましては、教育・保育給付費をはじめとする社会保障費等について増額する一方、年度内の所要額がほぼ確定した経費を減額しております。
 以上が補正予算の概要であります。

 条例議案は、「福岡県緊急経済対策資金等信用保証料補填臨時基金条例」について、基金に基づく事業を令和10年度まで継続することに伴い、本条例の有効期限を延長するものであります。

 経費負担に関する議案は、漁港関係事業及び海の中道海浜公園事業について市の負担すべき金額を定めるもの並びに空港整備事業ほか6件について議決内容の一部を変更するものであります。

 以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。

 


日程 | 提出議案| 諮問| 知事議案説明要旨| 代表質問 | 一般質問
採決結果| 可決された意見書・決議、採択された請願