トップページ > 本会議の情報 > 令和5年2月定例会 >令和5年2月定例会の知事議案説明要旨

令和5年2月定例会の知事議案説明要旨

当初提出議案(令和5年2月20日)

 本日ここに、第21回福岡県議会定例会を招集いたしましたところ、議員の皆様におかれましては、ご参集いただき、厚くお礼申し上げます。

 議案の説明に入ります前に、発言をお許しいただきたいと思います。
 このたびのトルコ南東部で発生した大地震により、甚大な被害が発生しました。亡くなられた方々に対し深く哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。1日も早い復旧・復興を切に願っております。

 このたびの議会は、令和5年度当初予算をはじめ、多くの重要な案件についてご審議をお願いするものであります。
 議案の説明に先立ち、まず県政運営に関する私の所信を申し上げ、議員各位をはじめ、県民の皆様のご理解と、より一層のご協力をお願い申し上げる次第です。

 本県における新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数は、1月中旬以降、減少傾向が続いており、病床使用率も2月13日以降、30%を下回り改善しています。また、重症病床使用率は極めて低い水準で推移しています。
 このため、昨年12月に発動した「福岡オミクロン警報」については、専門家のご意見や市町村との協議を踏まえた上で総合的に判断し、2月13日をもって解除いたしました。
 感染防止対策にご理解、ご協力をいただいている県民・事業者の皆様、ワクチン接種や病床の確保をはじめ、医療現場の最前線でご尽力いただいている医療関係者の皆様、様々な現場で社会を支えていただいている全ての皆様に改めて敬意を表し、心から感謝申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症について、先月、国は、5月8日から、感染症法上の位置付けを季節性インフルエンザなどと同じ「5類感染症」に変更することを決定しました。
 このことは、新型コロナウイルス感染症の発生から3年が経過し、デルタ株に比べて重症化リスクが低いことが示されているオミクロン株が主流となる中、ウィズコロナへの取組をさらに進めていく上で大きな一歩です。
 しかし、法的な位置付けが変更されても、ウイルスそのものの性質が変わるわけではありません。今後とも、国民の命と健康をしっかりと守りつつ、医療機関における診療・検査体制や変異株の発生動向を把握できる体制等を構築することが求められます。また、変更に伴い、国民や医療現場の皆様に混乱を引き起こすようなことがあってはなりません。
 このため、県では、決定後直ちに、県医師会をはじめ県内の医療関係団体や大学病院、専門家、市町村などのご意見をお伺いし、厚生労働大臣及び新型コロナ対策・健康危機管理担当大臣に対し、変更後の受診方法や療養上の留意点などの周知徹底、医療機関等における感染対策や患者受入れに伴う負担に見合った財政支援、感染拡大防止等のために自治体が実施する取組に対する財政支援など、25項目にわたる要望書を提出しました。また、現在、県においても、5類への移行に向けた課題を整理し、その対応について検討を進めているところです。
 引き続き、皆様のご理解とご協力をいただきながら、新たな段階への円滑な移行を図り、ウィズコロナに向けてさらなる一歩を大きく踏み出していきたいと考えております。

 昨年を振り返ると、新型コロナの爆発的感染拡大、ロシアのウクライナ軍事侵略、急激な円安など、予測困難な事象によって、私たちの生活、社会経済の足元を心配しなければなりませんでした。
 これに対し、県では、中小企業、農林漁業者の皆様の事業継続支援に全力を挙げるとともに、今後も起こり得る様々な情勢変化に対し、しなやかに対応できる強い産業経済構造をつくることを目指して各種の対策を実施してまいりました。
 県民の皆様の命と健康、生活を守ることを最優先に取り組む。この考えは、知事就任以来、一貫して変わることはありません。その上で、未来を見据えて「成長・発展」へ加速前進してまいります。

 令和5年度は、閉塞感を打破し、国内外から投資や企業、そして人材を呼び込み、地域の活力基盤をさらに強固なものにするとともに、人や経済、社会にしっかりとした投資を行います。
 第1に、「1000億円の人づくり」です。
 本県の発展を担うのは「人」です。
 本県の未来を切り拓いていくのは子どもたちです。
 ICTを積極的に活用し、子どもたちにハイレベルな学びの機会を提供します。県内の様々な地域資源を活かし、コロナ禍で制約のあった学び・活動・交流の機会の充実を図るとともに、子どもへの体験活動を提供する新たな取組を全県的に展開します。
 失敗を恐れず、留学、スポーツ、芸術、起業など、それぞれの夢に向かってチャレンジする若者を応援し、「未来を担う人づくり」を推進します。

 半導体など成長が期待される分野で活躍するテクノロジー人材や経営感覚に優れた農業人材など、「経済成長を支える人づくり」に力を入れます。
 ⅠT、建設業、農業など様々な分野における女性活躍を推進するとともに、ひとり親の安定就業、高齢者や障がいのある方の就業機会の確保などに取り組み、県民一人ひとりが「いきいきと輝く人づくり」を進めます。
 この3年にわたるコロナ禍において、医療従事者の皆様をはじめ、エッセンシャルワーカーの皆様には、様々な現場で社会を支えていただきました。改めて敬意を表します。
 引き続き、医師・看護師、介護人材、保育士等の確保・育成や消防団加入の促進など、「社会を支える人づくり」に力を入れます。
 こうした「人財」の育成に積極的に投資し、本県の社会経済、そして未来を担う人材を育てます。

 第2に、「県内GDP20兆円への挑戦」です。
 本県の県内総生産、いわゆる県内GDPは、物価変動の影響を除いた実質値で見ますと、平成24年度の18・5兆円から30年度には19・9兆円と成長しましたが、令和元年度は、消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減などにより、19・7兆円に減少しました。
 さらに、令和2年度は、新型コロナ感染拡大の影響により、大きく落ち込むことが見込まれており、その後、持ち直しの動きが見られるものの、成長段階には至っておりません。
 物価・エネルギー価格の高騰や海外での景気後退の可能性が指摘される中、未だ達したことのない県内GDP20兆円を達成するのは容易ではありません。
 しかし、臆することなく、前を向き挑戦します。「県内GDP20兆円への挑戦」という旗を掲げることにより、県内市町村、そして企業の皆様と力を合わせ、本県の経済を牽引する産業を育て、成長・発展の歩みを前進させます。官民で全力で取り組むことで、その効果を年々高めていき、県内GDP20兆円を達成し、未来につながる経済成長を実現してまいります。
 昨年、「グリーン」をキーワードに、半導体、自動車、水素の産学官連携組織を発展的に改組・新設しました。これらの新たな推進組織を活かして、グリーンデバイス開発・生産拠点の構築や、100年に一度の大変革期を迎えている自動車のグリーン先進拠点の形成に向けた取組を推進するとともに、グリーン水素による経済と環境の好循環の実現を図ってまいります。
 また、ベンチャーを支援し、育成する新たな取組を進めるとともに、創薬や再生医療などの分野でベンチャーの成功モデルの誕生が相次いでいるバイオ産業や裾野の広い宇宙ビジネス、部品数が多く地元企業の参入が期待される風力発電産業など、未来を切り拓く産業への成長を図ります。
 さらに、福岡空港の滑走路増設や北九州空港の滑走路延長、いわゆる下関北九州道路の早期整備に向けた取組、企業誘致の受け皿となる産業用地の整備など、将来の発展基盤となる社会資本整備を積極的かつ着実に進め、「世界から選ばれる福岡県」を実現してまいります。

 第3に、「安全・安心で活力ある社会づくり」です。
 昨年は、ワンヘルスの取組が大きく前進した記念すべき年となりました。「アジア獣医師会連合(FAVA)大会」では、「アジアワンヘルス福岡宣言2022」が世界に向けて発信され、また、「FAVAワンヘルス福岡オフィス」の設置も決定しました。県においても、「ワンヘルスの森 四王寺」や「ワンヘルスパーク」を開設しました。
 令和5年度は、全国初となるワンヘルスセンターの整備を進めるとともに、「FAVAワンヘルス福岡オフィス」や大学と連携した取組により、ワンヘルスの世界的先進地を目指してまいります。
 災害からの復旧は着実に進捗しております。引き続き、被災地の復旧・復興に全庁一丸となって取り組むとともに、激甚化・頻発化する自然災害に備え、流域治水を推進し、防災・減災、県土強靱化を進めてまいります。
 今年夏に、九州北部豪雨で被災した日田彦山線が「BRTひこぼしライン」として開業されます。東峰村及び添田町と連携し、沿線地域の振興を図ってまいります。

 急速に進む少子化により、本県の出生数は平成28年以降、6年連続で減少しており、子どもを安心して産み育てることができる地域社会づくりを積極的に推進していかなければなりません。
 出産・子育て施策の充実強化のため、新たに「出産・子育て安心基金」を設置いたします。令和5年度は、この基金を活用し、病児保育利用料の無償化及び先進医療による不妊治療への助成を新たに実施いたします。
 今後も、この基金を活用しながら、機動的な出産・子育て施策を講じてまいります。
 そして、誰もが人権を尊重され、社会のあらゆる分野で自分に合った生き方を選択し、年齢、性別、障がいの有無に関わらず、個人として持つ能力を発揮することができる社会を目指します。このため、ジェンダー平等を推進します。また、「福岡県手話言語条例」を制定するなど、障がいのある方の自立と社会参加を支援する取組を進めてまいります。
 さらに、スポーツの振興、生活習慣の改善による健康寿命の延伸、文化芸術の振興を推進するほか、地域公共交通の維持・確保や移住定住を促進するための取組を進め、県内各地域の活力を創出してまいります。

 このようにして、県民の皆様と手を携えて未来への扉を開き、本県を九州のリーダー県として、さらに飛躍・発展させ、県民の皆様が安心してたくさんの笑顔で暮らせる福岡県にしてまいります。
 ここで、令和5年度当初予算及び令和4年度2月補正予算について、ご説明申し上げます。
 令和5年度当初予算は、国の総合経済対策を最大限活用した令和4年度12月補正予算及び2月補正予算と合わせた16か月予算として、一体的に編成し、「1000億円の人づくり」、「県内GDP20兆円への挑戦」及び「安全・安心で活力ある社会づくり」のための施策を展開することにより、福岡県の未来を見据え、「成長・発展」に向けて加速前進してまいります。
 併せて、財政の健全化を着実に推進するため、「財政改革プラン2022」に沿ったメリハリの効いた予算編成を行いました。
 令和5年度当初予算の規模は、
 一般会計で2兆1975億800万円余、
 特別会計の総額で9829億6400万円余、
 企業会計の総額で437億1900万円余
 であります。
 一般会計の予算規模は、前年度当初予算比で2.1%の増で過去最大となっております。

 次に、令和4年度2月補正予算について、ご説明申し上げます。
 今回の2月補正予算は、国の総合経済対策の効果を速やかに発揮させるために必要な経費等を措置しております。
 2月補正予算の額は、一般会計で100億7400万円余であります。これにより、令和4年度の一般会計の総額は2兆3488億2000万円余となります。

 16か月予算の概況について、ご説明申し上げます。
 予算の規模は、前年度の16か月予算に比べ0.4%の増となっております。
 歳出予算については、新型コロナウイルス感染症対策等の進捗に伴い、生活福祉資金特例貸付の終了や県制度融資に係る預託金の減など行政施策費が、477億円の減となっております。
 また、公共事業費については、豪雨災害の改良復旧事業の進捗等により、46億円の減となりました。
 一方、県税等の増加に伴い、税関連市町村交付金等が444億円増加しております。

 歳入予算については、法人二税及び地方消費税が堅調であることから、県税等が741億円の増、地方交付税は国の交付税総額が増となったことに伴い、89億円の増となっております。
 一方、国庫支出金については、国の新型コロナウイルス感染症対策の減などにより、442億円の減となっております。
 また、県債については、地方財政計画において、地方税の増加が見込まれたことに伴い、臨時財政対策債が減となったことなどから、172億円の減となりました。

 引き続き、歳出予算の主要施策について、ご説明申し上げます。
 最初に、「1000億円の人づくり」であります。
 「未来を担う人づくり」では、青少年アンビシャス運動の成果を発展的に継承し、市町村や企業等の多様な主体が提供する、創意工夫を活かした体験活動を通じて、子ども同士が切磋琢磨しながら成長していくことを目指す「未来子どもチャレンジ応援プロジェクト」を新たに開始します。
 また、世界を舞台に活躍することを目指す高校生を応援するため、海外の県人会企業での就業体験や、シリコンバレーでの企業・大学等の体験研修を実施します。
 県立高校に配備した1人1台のタブレット型パソコンを活用し、指導力の高い教員による講習など学校の枠を越えた教育活動を進めるとともに、デジタル採点分析システムを導入し、個々の生徒の特性に合った学習指導や授業の改善を行ってまいります。
 「経済成長を支える人づくり」では、本県の半導体関連企業等で活躍する人材を育成するため、新たに、企業の優れた技術を学ぶ「テクノロジー人材創生塾」や県内外の理工系大学生が工場を見学・体験する「オープンカンパニーツアー」を実施します。
 また、「システム開発技術カレッジ」を抜本的に見直し、「福岡県半導体人材リスキリングセンター(仮称)」を新設します。県内中小企業の受講料は無料とし、デジタル産業や自動車産業分野などの重要技術に精通した人材の育成を強力に進めてまいります。
 このほか、本県が誇るブランド農産物を支える人材を育成するため、雇用就農を希望する方が、複数の農業法人で農作業を経験できる「トライアル就農」を新たに実施します。

 「いきいきと輝く人づくり」では、IT、建設業、農業など様々な分野で活躍する女性人材を育成してまいります。
 このため、女性経営者等と県の職員が、女性がいきいきと活躍していくための課題や必要な取組等について幅広く意見交換する「女性活躍イノベーションワークショップ」を開催いたします。また、働く女性の交流の場「福岡キャリア・カフェ」を提供し、企業等の垣根を越えたネットワークづくりを支援するほか、大学発ベンチャーと高度人材をマッチングするCXOバンクへの女性人材の登録を進めます。
 建設現場で働く女性に焦点を当てたPR動画の配信や、女性農林漁業者が事業計画を発表し、応援企業を募るベンチャーマーケットの開催などに新たに取り組んでまいります。
 障がい者施設の利用者や引きこもり、難病患者など働きづらさを抱える方が、書籍等のデジタル化業務を行う「福岡モデル」を北九州地域に拡大するとともに、北九州市内に県内2か所目となる障がい者テレワークオフィスを設置します。
 このほか、大牟田高等技術専門校の移転改築のための基本設計を実施するとともに、移転後の介護系科目の新設に向けた準備を進めてまいります。

 「社会を支える人づくり」では、介護事業者の人材育成や労働環境改善の取組を認証し、公表する制度を創設し、介護職を目指す方の求職を支援します。
 また、保育士不足により、児童の受入れが保育所定員に満たないことに伴う待機児童の解消を図るため、保育士・保育所支援センターにコーディネーターを追加配置し、短時間雇用を希望する保育士の開拓及び保育所とのマッチングを行います。
 祭りなどの地域伝統行事は、担い手不足に悩んでいます。これを支援するため、新たに、運営スタッフとして参加できる方を登録し、地域に派遣します。

 次は、「県内GDP20兆円への挑戦」であります。
 「グリーンデバイス開発生産拠点の形成」では、取引拡大を希望する県内半導体関連企業を訪問し、県内外の企業とのマッチングや技術力向上の助言を行うアドバイザーを新設します。
 また、県内半導体関連企業による国内外の大企業への出張技術提案会を開催するほか、台湾の大型半導体展示会への出展を支援します。

 「北部九州自動車産業グリーン先進拠点の推進」では、県内サプライヤーの電動化分野への参入を進めるため、新たに、電動車の分解部品の構造を解説する「出前電動化道場」を実施するとともに、電動化や自動化などCASEと呼ばれる技術革新に対応した新製品開発を支援いたします。

 「水素グリーン成長戦略の推進」では、安定的で大量の水素需要をもたらし、水素エネルギー普及の切り札として期待されるFCトラックの先進拠点を目指し、県内運送業者への導入支援やメンテナンス人材の育成を実施するほか、今年夏に開業予定の日田彦山線「BRTひこぼしライン」において、FCバスの運行実証を行います。
 また、FCトラックの展示・体験イベント等を行う「福岡モーターショー2023」を開催します。
 オーストラリア・ニューサウスウェールズ州との将来的な水素受入れを目指した関係構築を進めるとともに、国による水素供給インフラ拠点の採択に向け、ロードマップ策定のための調査を実施します。。

 「中小企業の振興」では、本県経済の発展と活力の原動力であり、県内雇用の8割を担う中小企業の新たな事業展開や事業承継などをきめ細かく支援してまいります。
 コロナ関連融資からの借換えや、新たな資金需要に応える「経営改善借換資金」の融資枠を十分に確保し、中小企業の資金繰りを支援します。
 中小企業の事業承継を契機とした経営改善の取組や、インボイス制度への対応も見据えたデジタル化を支援し、生産性の向上を強力に進めてまいります。
 また、福岡デザインアワードを開催し、受賞商品を周知する「福岡県産業デザインウィーク」を実施するとともに、クラウドファンディングへの出店を支援し、デザインを活用した商品の販売を促進してまいります。
 さらに、県知事指定特産民工芸品の認知度向上を図るため、新たに統一ロゴマークを作成するとともに、事業者が取り組む販路拡大や新商品開発等を支援します。

 「農林水産業の振興」では、稼げる夢のある産業を目指し、県産農林水産物のブランド化や輸出の拡大、デジタル化による生産力強化を進めてまいります。
 冷蔵貯蔵に適した「秋王」の自動選果技術及び「とよみつひめ」のカビ発生抑制技術の実証により、ブランド力の一層の強化と販売・消費の拡大を図ります。
 果樹産地ごとに気象条件に応じた栽培を行うための気象観測スポットを設置し、気象予測を行うアプリを開発します。
 農林業総合試験場の研究部門を集約し、施設園芸における先端栽培技術の開発拠点を整備するため、基本構想を策定します。
 また、「博多和牛」の全国和牛能力共進会での優等賞入賞を契機として、新たに、香港への試験輸出やタイでのフェアを開催するとともに、米国の日本食レストランにおいて県産酒、八女茶、「福岡有明のり」のプロモーションを一体的に実施し、県産農林水産物の輸出を拡大してまいります。
 さらに、デジタル技術を活用した生産力の強化では、各産地から北九州市のストックポイントを経由して、東京の市場までの集出荷情報を共有するシステムの構築を支援し、青果物の首都圏への安定供給を図ってまいります。
 水産業では、現在の海況予測システムを改修し、7日後の水温や潮流等の予測を可能とすることにより、筑前海における計画的な漁船漁業を支援してまいります。
 有明海のノリ漁業者の養殖管理と高品質な生産を支援するため、3日後の漁場の水温や潮位を予測するシステムを開発するとともに、赤潮被害からノリ養殖の生産を守るため、漁協が行う植物プランクトンを捕食する2枚貝の定着を支援します。
 「観光産業の振興」では、コロナ禍を乗り越え、本県観光の本格的な復興を目指し、国内観光需要の拡大や、インバウンド観光の再興に全力を挙げて取り組んでまいります。
 閑散期の平日に観光客を呼び込むため、本県の宿泊施設を利用する旅行者の宿泊代金や旅行代金の割引支援を行うほか、本県を修学旅行の行程に組み込んだ県内外の学校に対するバス代の助成を行い、誘致を進めます。
 また、インバウンド誘客では、新たに、欧米豪を中心とする富裕層を対象とした高付加価値で高単価な旅行商品を造成してまいります。
 さらに、関西圏の外国人旅行者を呼び込むため、新幹線による荷物の輸送実証を行うとともに、JR西日本の外国人向け企画乗車券と合わせて利用を促進してまいります。
 このほか、令和6年春の「福岡・大分デスティネーションキャンペーン」に向け、複数の市町村が連携して実施する観光素材の開発やプロモーションを支援するとともに、ホテルにおいて国内外の観光客に八女茶のティーバッグを提供するなど、おもてなしの強化を図ってまいります。

 「ベンチャー支援」では、ボストンを本拠地とするケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)を核としたベンチャー創出拠点を形成するため、CIC Tokyo内に本県職員が誘致活動を行うための拠点を新設します。
 また、起業家や投資家が交流し、事業創出に向け意見交換する「ベンチャーカフェ・フクオカ」を開催するほか、ボストンに訪問団を派遣し、ベンチャーキャピタル等を誘致します。
 さらに、韓国やタイ等の海外ベンチャー誘致に特化した「グローバル・ビッグマーケット」を新たに開催し、県内企業や海外のベンチャーキャピタルとのマッチングにつなげるほか、「福岡県・九州大学イノベーションカンファレンス」を開催し、新プロジェクトの創出を強力に進めてまいります。

 「先端技術産業の振興」では、創薬のバイオベンチャーを育成するため、久留米大学と連携して、希少疾病医薬品の研究開発から臨床試験、資金調達までを支援するプラットフォームを新たに構築します。
 宇宙ビジネスの振興では、県内企業による衛星データを活用したサービス開発や、宇宙日本食の新製品開発・認証を支援します。
 ブロックチェーンの活用では、新たに、電力トレーサビリティ証明による温室効果ガス排出量取引「福岡・飯塚モデル」構築に向けた、県内IT企業の実証を支援します。
 また、国産の天然アサリである「福岡有明あさり」のトレーサビリティ証明を導入した流通体制「福岡モデル」の実証に取り組みます。

 「GXの推進」では、世界的な脱炭素化の流れを捉え、県自らが率先して脱炭素化を強力に推進してまいります。
 太陽光発電設備の設置が可能な111の県有施設について、令和7年度までに計画的に整備することとし、来年度は23施設の設置に着手します。
 また、電動車への切り替えが可能な公用車792台については、令和12年度までに計画的に導入することとし、来年度は93台を更新します。
 さらに、移転改築する福岡武道館については、40%以上の省エネ化(ZEB Oriented以上)を図ってまいります。
 モデル団地における、住宅の断熱性能向上と電力販売契約(PPA)による太陽光発電設備の導入を支援し、国の省エネ基準ZEHを上回る「福岡未来づくり住宅」の普及を図ってまいります。

 「戦略的な企業誘致の推進」です。
 企業誘致の受け皿として、苅田港新松山地区の工業用地造成を進めるとともに、大規模データセンター等の誘致を図るため、直方・鞍手工業用地の造成を進めるほか、引き続き、市町村の産業団地の整備に向けた調査を支援します。
 国際金融機能誘致では、国際金融アドバイザーや駐日外国公館等と連携してFinTech企業を本県に招へいするとともに、これらの企業と地元企業とのマッチングなどに「TEAM FUKUOKA」一丸となって取り組みます。

 「将来に向けた社会資本整備」では、産業振興の基盤となる基幹道路の整備や、いわゆる下関北九州道路の早期整備に向けた取組とともに、都市高速道路の福岡高速3号線の延伸を進めてまいります。
 また、福岡空港の滑走路増設を着実に進めるとともに、北九州空港について、貨物便の運航支援や旅客路線の早期回復に取り組み、滑走路延長の早期実現を目指します。

 最後は、「安全・安心で活力ある社会づくり」であります。
 「ワンヘルスの推進」では、「ワンヘルスセンター」の中核施設である保健環境研究所及び動物保健衛生所の整備を着実に進めてまいります。
 国際機関と連携した専門性の高いワンヘルス国際フォーラムを開催するとともに、世界を代表するワンヘルスに関する国際会議の誘致活動を展開するほか、ハワイ州と連携してワンヘルス推進を担う人材育成を進めてまいります。
 また、ワンヘルスの理解を促進するため、新たに、ワンヘルスの実践活動を広める「ワンヘルスマスター」を育成するとともに、ワンヘルス宣言事業者等が情報交換を行う交流会を開催するほか、現行の筑後地域に加え、福岡地域において「ワンヘルスフェスティバル」を開催します。
 「新型コロナウイルス感染症対策」では、高齢者施設及び障がい者施設の職員等に対する検査や、入院病床及び宿泊療養施設の確保、医療機関に対するワクチン接種費用の上乗せなど、必要な医療提供体制及びワクチン接種体制を引き続き確保してまいります。

 「物価・エネルギー高騰対策」では、県立学校及び私立の小中学校、幼稚園、保育所等が行う給食の材料費上昇分を助成し、保護者負担を軽減します。
 地域における個人消費を喚起し、商店街をはじめとした地域経済を下支えするため、商工会議所・商工会等が行うプレミアム付き地域商品券の発行を支援するとともに、物価高騰に伴う発行経費の増加分を助成します。また、全ての発行団体によるキャッシュレス商品券の発行を促進し、デジタル化による地域経済の活性化を推進します。

 「災害からの復旧・復興、防災・減災、県土強靱化の推進」です。引き続き、道路、河川等の復旧や河川拡幅などの災害防止対策を推進し、被災地の復旧・復興に全力を挙げてまいります。
 市町村等が行う、ため池、グラウンド等の雨水貯留浸透施設の整備や田んぼダムの導入を新たに支援し、流域全体で水害を軽減させる流域治水を推進してまいります。
 公共土木施設の点検を迅速かつ効率的に行うため、事前に飛行ルートを設定することで、目視できない場所でも自律飛行が可能な高機能ドローン及びAI分析ソフトによる実証に取り組みます。
 日田彦山線沿線の地域振興のため、BRTの利便性向上や安全確保のための道路改良を行うとともに、BRT開業に向けた記念イベントや沿線地域の周遊ツアーなどを実施するほか、新たに、芸術家による創作活動を通じた地域住民との交流イベントなどの取組を支援します。

 「快適な環境の維持、保全」では、産業廃棄物処理施設の立入検査に、最新型赤外線カメラを搭載したドローンを導入し、不適正処理の早期発見・早期是正、火災事故の未然防止を図ってまいります。
 特定外来生物による被害防止のため、本県に定着している特定外来生物の防除実施計画を策定するとともに、市町村職員等を対象とした防除の担い手育成のための講習会を実施します。

 「治安の確保」では、暴力団の壊滅に向け、引き続き徹底した取締りを行うとともに、有力な資金源となっているニセ電話詐欺を撲滅するため、電話事業者と連携し、防犯機能サービスを活用した防止対策を実施します。
 NPOなどの多様な主体と連携し、飲酒運転通報義務の周知などの啓発に取り組み、飲酒運転の撲滅を推進してまいります。
 本年4月から、自転車運転でのヘルメット着用が努力義務化されます。啓発動画やバーチャルリアリティを活用した交通安全教育を徹底するとともに、指導取締りを強化してまいります。
 このほか、ストーカー被害者を確実に保護するため、被害者宅への訪問者を検知し、警察に通知する監視カメラを追加配備します。
 「子どもを安心して産み育てることができる地域社会づくり」では、出会い、結婚、出産、子育て、仕事の各ライフステージに合わせて、切れ目のない支援を行います。
 「出産・子育て安心基金」を活用した新たな出産・子育て施策では、出産を希望し、不妊治療を受けている夫婦を支援するため、保険診療の対象とならない先進医療の費用の一部を助成するとともに、病児保育の利用負担を軽減するため、施設の利用料を無償化します。
 出会い応援団体の独身者がウェブで交流できる会員登録制のコミュニティサイトを立ち上げ、投稿内容等をAIが診断の上、相性の良いグループ間による出会いイベントを実施します。
 全ての児童相談所職員に専用システムを搭載したモバイル端末を配備し、外出先でも迅速に虐待等に対応できる環境を整備します。
 こども食堂が安定した活動ができるよう、企業や市町村等とのネットワーク化を支援するとともに、クラウドファンディング型ふるさと納税を活用した支援の仕組みを構築します。
 このほか、障がいの有無に関わらず、全ての子どもたちが一緒に遊べるインクルーシブ遊具を設置した広場やバリアフリー園路などを県営公園に計画的に整備することとし、来年度は、大濠公園及び筑豊緑地に整備します。

 「ジェンダー平等の推進」では、経済分野におけるジェンダーギャップを解消するため、IT分野での就労を希望する女性に対し、スキルに応じた研修から就職、キャリアアップまで、パッケージで支援いたします。
 性的少数者のための電話相談窓口を新設し、きめ細かな支援を行うとともに、パートナーシップ宣誓制度で利用できるサービスを拡大するため、企業向けセミナーを開催します。
 「誰一人取り残さない支え」では、今議会に提案しております「福岡県手話言語条例」の基本理念を踏まえ、乳幼児期からの親子教室を実施するとともに、同時手話通訳ができる手話通訳士や手話通訳者等を養成し、ろう者が安心して生活できる社会を実現してまいります。
 また、孤独や孤立の気持ちを抱える若者が集う居場所をメタバースに構築し、アバターを活用した交流の場を作ることにより、若者の孤独感の緩和を図ります。
 長期無業者の就労支援では、メタバースにおいて、アバターを活用した相談やコミュニケーショントレーニングを実施し、就職につなげてまいります。
 「スポーツの振興、健康づくりの推進」では、スポーツを通じて県民の皆様を元気にするとともに、生活習慣の改善による健康寿命の延伸に取り組みます。
 九州初の国際サイクルロードレース「ツール・ド・九州2023」を開催するとともに、大会を盛り上げるため、バーチャルリアリティを活用したイベントや、大会当日の観戦イベントを開催します。会場では、国内外の関係者に食や観光といった、本県の魅力を発信してまいります。
 「世界水泳選手権2023福岡大会」の開催を支援するとともに、飛込競技会場となる県立総合プールの改修を行います。また、県内の中学生を観戦に招待し、世界トップレベルの競技を間近で体感する機会を提供します。
 アーバンスポーツの振興のため、筑後広域公園に本県BMXの拠点としてBMXパークを整備するとともに、筑豊緑地にスポーツクライミング施設を整備します。
 健康づくりでは、生活習慣病予防のための減塩の取組「スマートソルティング」を新たに推進いたします。このため、有名料理研究家の監修による県民参加型の「スマソルレシピコンテスト」を開催するとともに、最優秀レシピをもとに開発されたスマソル弁当の量販店での販売を支援します。
 また、運動習慣の定着のために市町村が行うケア・トランポリン教室への支援を引き続き実施します。

 「文化芸術の振興」では、県立及び市町村立の美術館・博物館等の常設展を来年度に限り無料化し、小中学生にコロナ禍で減少した文化芸術に触れる機会を提供してまいります。
 九州芸文館の開館10周年を記念して、地域の文化資源が一堂に会す体験型イベントを開催いたします。
 本県の新たな文化芸術活動の拠点となる新県立美術館については、今年度、プロポーザルにより選定した設計者により、整備に向けた基本設計等を実施します。
 「世界に向けた発信と交流の推進FUKUOKA IS OPEN」では、多言語ポータルサイト「FUKUOKA IS OPEN」を新たに開設し、本県の教育や医療など外国人向け生活関連情報をはじめ、留学生、インバウンド、国際金融機能の誘致やスポーツ、環境、ワンヘルスなど先進的施策に関する情報、在住外国人の活躍など最新情報を発信し、世界から人材、企業、投資を呼び込みます。
 国際交流では、タイ・バンコク都、インド・デリー州及びベトナム・ハノイ市との友好提携15周年記念事業を実施し、経済分野をはじめ、本県と各国との交流をさらに促進してまいります。
 「地域の活力の創出」では、移住定住の取組を進めるため、新たに、居住・就業・交流体験が一体となった短期プログラムを移住希望者に提供するとともに、テレワークによるワーケーションなど企業の取組を支援するほか、子育て世代への移住支援金を拡充します。
 地域公共交通の維持や地域活性化のため、複数の交通手段から最適な組み合わせを選択し、検索から予約、決済等を一括で行うサービス「MaaS」のデータ整備に取り組むとともに、市町村と交通事業者等の連携による企画乗車券の造成など「MaaS」を活用した実証を支援します。

 以上が、予算の概要であります。

 本日、ここに提案しております議案は、ただいまご説明申し上げました令和5年度予算議案20件及び令和4年度補正予算議案1件のほか、条例議案20件、契約の締結に関する議案10件、経費負担に関する議案2件、その他の議案2件、人事に関する議案2件であります。
 このうち、条例議案について、その概要をご説明申し上げます。

 第1は、「福岡県こども育成基金条例の全部を改正する条例」であります。子どもを安心して産み育てることができる地域社会づくりを積極的に推進するため、「福岡県出産・子育て安心基金」を設置するものであります。

 第2は、「福岡県手話言語条例」の制定であります。ろう者が手話を使い日常生活や社会生活を安心して営むことができる社会の実現に寄与するため、手話が言語であるという認識の下、手話の普及等に関する基本理念を定め、施策の基本となる事項を定めるものであります。

 そのほか、公衆浴場の形態が多様化している状況に鑑み、公衆衛生上及び風紀上支障がないと認められる場合に、営業者が講じなければならない措置の基準の特例を見直す条例、県立学校及び市町村立学校職員の定数を改める条例、関係法令の一部改正に伴い所要の規定の整備を行う条例12件などであります。

 以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。

追加提出議案(令和5年2月28日)

 本日、追加提案いたしました議案は、24件であります。その内訳は、令和4年度補正予算議案12件、条例議案1件、経費負担に関する議案10件、その他の議案1件であります。

 まず、予算議案について、ご説明申し上げます。
 今回の補正予算は、年度内に措置する必要がある経費を補正するものであります。
 補正予算の額は、一般会計で369億1900万円余、特別会計で224億9500万円余をそれぞれ増額しております。また、企業会計では、流域下水道事業会計及び工業用地造成事業会計において補正を行っております。
 その結果、令和4年度予算の総額は、一般会計で2兆3857億4000万円余、特別会計で1兆175億5900万円余となっております。

 歳入につきましては、企業業績が堅調に推移していることなどにより、国、県ともに増収が見込まれることから、県税や地方消費税清算金、地方譲与税を増額しております。また、歳出予算に対応した国庫支出金等の補正を行っております。

 歳出につきましては、税収などの増により、税関連市町村交付金を増額するとともに、一般財源の確保が見込まれるため、財政調整基金等三基金への積立てを行うほか、年度内の所要額がほぼ確定した経費を減額しております。
 以上が補正予算の概要であります。

 条例議案は、「福岡県緊急経済対策資金信用保証料補填臨時基金条例」について、保証料補填の対象となる融資制度の追加に伴い、基金の名称を改めるとともに、本条例の有効期限を延長するものであります。

 経費負担に関する議案は、漁港関係事業及び海の中道海浜公園事業について市の負担すべき金額を定めるもの並びに空港整備事業ほか7件について議決内容の一部を変更するものであります。

 その他の議案は、国土交通大臣から求められた筑後川水系法司川に係る一級河川の指定の変更に関する意見について、県議会の議決を求めるものであります。

 以上、提出議案の概要についてご説明申し上げましたが、いずれの議案も県政運営上緊要なものでありますので、慎重ご審議の上、議決下さいますようお願い申し上げます。

 


日程 提出議案 諮問知事議案説明要旨代表質問一般質問
採決結果可決された意見書・決議、採択された請願