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九州の自立を考える会 シンポジウム「これからのJR日田彦山線沿線地域を考える」

 令和3年2月12日、本県議会議員をはじめ、九州の政財界の有志を会員とする「九州の自立を考える会」(会長:藏内勇夫議員)が、シンポジウム「これからのJR日田彦山線沿線地域を考える」を福岡市内で開催されました。

 はじめに、九州の自立を考える会の藏内勇夫会長が、次のように主催者として挨拶をされました。
 「我々は、法律の改正を待たず、九州が一体となってやれることはやっていこうという取組の中で、地方分権を進めていく団体。これに応えて福岡県議会では、歴代正副議長はじめ、代表者の皆様方のお力添えをいただき、議員提案として、観光振興等の条例をつくり、そしてこのたびワンヘルス条例をつくっていただいた。これは、47都道府県の中でも福岡県議会が画期的な役割を果たしていることの証左ではないかと思う。COVID-19の惨禍の中で、大分県の広瀬勝貞知事が『国がやらずとも、地方でやることは勇気を持ってやっていこう』とおっしゃっていた。そして、服部誠太郎副知事が福岡県知事職務代理者になられて、『福岡県の感染症対策において、緊急事態宣言を国がかけるにしても福岡県独自の基準を持って判断をしたい』と明確に国に対して意見を述べられ、それが今実現しているが、これは、我々、九州の自立を考える会のビジョンそのものである。
 日田彦山線の問題であるが、よく多くの方々から『解決をしてよかったですね』と言われる。ありがたいことではあるが、解決は一切していない。地元の苦渋の選択の下、我々は一つのコンセンサスをつくることができた。九州の自立を考える会のプロジェクトチーム『日田彦山線復旧問題対策協議会』、座長は本会の理事である松本 國寛自民党県議団会長であるが、各会派の代表の皆さん方に検討いただく中でこういった成果を得ることができ、振興策を今からやるぞという体制が取られたところ。つまり、振興というのはまさしく今日からスタートをすると私は思っており、当時議長として頑張ってくれた地元の栗原渉前県議会議長も『会長、今からですよ』といった強い気概でこの問題に取り組む決意をしている」

九州の自立を考える会 藏内勇夫会長

九州の自立を考える会 藏内 勇夫 会長

 次に、吉松源昭議長が、次のように来賓挨拶をいたしました。
 「JR日田彦山線は、平成29年7月の九州北部豪雨で被災し、添田駅から夜明駅間が不通となったまま、復旧方法について長らく膠着状態が続いていたが、昨年の春以降大きく動き出した。
 藏内会長のご尽力により、昨年の3月、九州の自立を考える会に、自民党県議団の松本会長が座長を務めるプロジェクトチーム『日田彦山線復旧問題対策協議会』が設置され、この協議会の皆様、さらに、私の前の県議会議長である地元選出の栗原前議長が、鉄道での復旧を熱望されていた地元自治体や住民の方々の意見と、JR九州の意見を踏まえて、両者にとって、より良い形での復旧方法について調整を進められ、その結果、可能な限り専用道区間を延伸したBRT(Bus Rapid Transit バス高速輸送システム )による復旧が正式に決定された。
 災害からの復旧復興は、単に災害前の状態に戻すだけではなく、時代の動向を踏まえて、より良い形での地域振興につなげていくことが重要。県議会としても、九州の自立を考える会、JR九州、さらに地元自治体との連携の下、県執行部と一体となり、長期的にこの地域の振興に取り組んでまいる所存」

吉松源昭議長

福岡県議会 吉松 源昭 議長

 続いて、福岡県知事職務代理者の服部誠太郎福岡県副知事が、「このJR日田彦山線の復旧問題については、藏内会長をはじめとする九州の自立を考える会の皆様方には、幾度となく手弁当で現地に足を運んでいただき、地元の皆様との意見交換を重ね、復旧案の御提案までいただいた。その結果、昨年7月の復旧会議において、東峰村、添田町それぞれに御事情を抱えながらも、BRTによる復旧を断腸の思いで受け入れるとの判断をいただいたところである。
 日田彦山線沿線地域の振興の基本構想もいただいており、我々はこの基本構想を基に振興計画を策定していかなければならないと考えている。県としては、今後、沿線地域の魅力、歴史をいかした観光振興、あるいは地域資源や伝統の力をいかした産業振興、こういったことを通じて、持続的に発展する地域づくりを目指していかなければならないと考えている」と、同じく来賓挨拶をされました。

服部誠太郎副知事

福岡県知事職務代理者 服部 誠太郎 副知事

 その後行われた基調講演では、福岡大学経済学部の木下敏之教授が、「コロナを利用した地域振興」というテーマで、次のように話されました。
 「災害多発の時代。南海トラフ大地震がかなりの確率でやってくると言われている。また、今回の新型コロナウイルス以上に恐ろしい疫病が入ってくる可能性もある。
 そういう時代や節目の変化に対応するためには、県内も再集権が必要で、例えば県庁に集約すべきものは、まず保健所。少なくとも防疫関係は集約すべきで、非常時の場合は、政令市の保健所であっても指導できる権限が県に必要ではないか。また、大災害が発生する時期は、県内の消防組織をできるだけ一本化されていたほうがいい。そして、県警の組織と一体となると大災害の発生のときにも非常に対応がしやすくなると思う。
 次に、政府がお金を使ってデフレから抜け出さない限り、日本全体の経済成長もないし、九州が経済的に自立をすることもないと私は確信している。
 自治体が、すぐにできる方法として、ふるさと納税がある。人口9500人で、地方税収が年13億円の佐賀県の上峰町は、ふるさと納税を7年間で280億円稼いで、子どもは18歳まで医療費無料、保育園を増やして待機児童をなくし、子どもに毎月5000円のお稽古券を配布している。
 それでは、コロナを利用するお薦めプロジェクト。
 まずは、「九州に帰っておいで~」プロジェクト。既に、東京から出ていく人が多かったという報道を聞かれているはず。
 「九州に帰っておいで~」というキャンペーンを九州各県で共同して打てばいい。九州各県がばらばらに打つキャンペーンは、量が少なくてほとんど届かない。そして、一番大事なことは、今回は、給料がある程度安くても帰って来るということ。働く場所を思い切って提案すると、もっともっとよい流れになると思う。
 次に、コロナウイルスの感染拡大の関係で、免疫力を上げるなどの薬草が世界的に大ブームになっていること。
 これから中国はすさまじく高齢者の数が増える。すると漢方薬の原料は必ず不足する。このことを一生懸命やっているのは、富山県。富山県は県を挙げて漢方薬の材料確保に邁進している。
 そして、1足す1が2ではなくて、3にも4にもなる「1+1>2の広域プロジェクト」。
 今、先進国の潮流は、SDGsということもあって、骨組みは鉄骨、そして壁と床は木材というハイブリッド建築が主流。私は、わかりやすいように木造ハイブリッド建築と言っている。日本人は、ほとんどこの動きを知らない。
 5階建てだったら普通の公営住宅は全部木でできる。1年ぐらい前に「これだけの木材が必要だ」と林業界に言ってもらえると準備ができる。日田などの福岡に近い木材の産地も準備が可能で、九州の山間地は非常に助かると思う。
 次に、私が勝手につくって私だけが使っている言葉で、長崎新幹線の「柳川・佐賀空港ルート」。筑後船小屋から西鉄柳川駅のちょっと上に新柳川駅を造って佐賀空港に入れて、そこから肥前山口、鹿島につなぐという案。
 佐賀県が生き残る道は佐賀空港の活性化しかない。この案だと福岡県側にも非常にメリットが大きくて、福岡の第2空港が手に入る。そして、新柳川駅ができると大阪から直接観光客が入ってきて、この辺りは激変する。だから、これを福岡県側から両県に提案されると良いのではないか。
 その次に、やったらいいと思うもの。これも私が勝手につくった言葉で、東九州新幹線の「北九州空港・大分ルート」。小倉から宮崎や鹿児島まで行くとちょっと大変で、採算取れないのではないのかと。なので、まずは小倉-大分間だけでも先行して着工されたらいいのではないかと思う。
 そして、最後の提案。
 今、福岡市が国際金融都市構想を打ち上げているが、本当に実現しようと思うと、実は、鍵は福岡県議会の皆さんと福岡県庁の皆さんである。
 大前提があって、金融屋さんは金が要る人がいるところにしか来ない。アジアでの事業展開を任されているアジア統括本部を誘致しないと、金融都市なんて絶対不可能。
 ポイントを簡単に言うと、税率を下げないといけない。シンガポールや香港は法人税の税率が15とか17%。日本は自治体の税金を除いても30%で、これだと戦えない。
 県庁が所管している税金である法人事業税は今7%ほどかかっていると思うが、これをゼロにする。そして、政府に「福岡はここまでやるから、少しでも税率を下げてくれ」と言って、初めて戦える。
 藏内会長の構想ともぴったりはまる。「アジア防疫センター」が福岡にあると、こんなに安全なんだという安心感を与えることになる。なぜかというと、アジアの国々の中で見ると日本のコロナウイルス感染対策は決して優秀ではない。福岡が、今までと全然違って、人も動物も一体となってきちんとした防疫体制に取り組んでくれているというのは、誘致の際の非常に大きな材料になると思う。

木下敏之教授

講師:福岡大学経済学部
木下 敏之 教授

会場の様子

会場の様子

 基調講演終了後は、次の方々による「JR日田彦山線沿線地域の未来を語ろう」というテーマで座談会が開催され、盛会のうちにシンポジウムは終了いたしました。
<コーディネーター>
  木下 敏之 福岡大学経済学部 教授
<パネリスト>
  松本 國寛 日田彦山線復旧問題対策協議会 座長
         (九州の自立を考える会 プロジェクトチーム)
   江口  勝 福岡県 副知事
   寺西 明男 添田町 町長
   澁谷 博昭 東峰村 村長

木下敏之教授

木下 敏之 教授

松本國寛座長

松本 國寛 座長

江口勝副知事

江口  勝 副知事

寺西明男町長

寺西 明男 町長

澁谷博昭村長

澁谷 博昭 村長