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優生保護法問題の早期解決を求める意見書

 1948年に施行された旧優生保護法は、知的障がいや精神疾患を理由に本人の同意がなくても不妊手術を認めていた。同法は、1996年に障がい者差別に該当する条文を削除して母体保護法に改正されたが、厚生労働省によると、旧優生保護法の下で不妊手術を受けた障がい者等は約25,000人であり、このうち、本人の同意のない不妊手術は16,475件と報告されている。
 この問題への対応として、国は、2019年に旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律(以下「一時金支給法」という。)を制定したが、本年4月末時点における一時金の支給認定者は、全国で1,102人、福岡県でもわずか15人にとどまるなど、全面解決には程遠い状況にある。
 全国各地での優生手術等に関する訴訟では、2022年2月の大阪高等裁判所及び同年3月の東京高等裁判所の判決において、国の法的な賠償責任を認め、一時金支給法に基づく一時金を上回る額の賠償を命じている。松野内閣官房長官は、同年3月、判決で一時金の金額を超える認容額が示されたことを重く受け止め、一時金支給法が全会一致で制定された経緯も踏まえ、同法に基づく一時金の水準等を含む今後の対応の在り方を国会と相談すると述べている。
 また、昨年10月25日の仙台高等裁判所の判決は「国が民法724条後段の規定により被害者らの損害賠償請求権が消滅したと主張することは、権利の濫用として許されない」と断じ、また被害者らの苦痛は、優生手術を受けたことによるものだけでなく「不良な子孫の出生をもたらす存在という不当な差別の下に生きて来なければならなかった精神的苦痛」であると認定している。
 優生保護法被害者が高齢化していることに鑑みると、その全面的な被害回復のために、十分な補償等を行うとともに、優生思想に基づく差別の解消に向けた施策等を実施することが強く求められる。
 よって、国におかれては、優生保護法問題の早期解決に向けた措置を講ずるよう強く要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 

  令和6年6月24日

福岡県議会議長 香 原 勝 司

 

衆議院議長 額賀福志郎殿
参議院議長 尾辻秀久殿
内閣総理大臣 岸田文雄殿
総務大臣 松本剛明殿
厚生労働大臣 武見敬三殿