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「アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)」の早期設置を求める意見書
新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に全世界にまん延し、人類を恐怖と混乱に陥れ、世界経済と人々の生活に甚大な影響を与えた。
本感染症は、人から人へだけではなく、人と動物との間でも感染が見られる人獣共通感染症の一種であり、同様に、近年、世界各地で人々を襲ったエボラ出血熱、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、新型インフルエンザ、狂犬病、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)等の新興・再興感染症も動物由来の人獣共通感染症である。
このように、人獣共通感染症による脅威が頻発し、人の感染症のうち約6割を占めるようになったのは、人と動物の生活環境や自然環境が大きく変化し、生態系の健全性が損なわれたことも要因であるといわれている。
このため、人と動物の健康と環境の健全性は密接に関連し合う一体のものであり、人獣共通感染症対策には、医学と獣医学、そして環境科学等の各分野を超えて取り組まなければならない。まさに「ワンヘルス」の取組が必要である。
今後、新たな人獣共通感染症の発生も危惧されている中、来年4月、国立健康危機管理研究機構が設立され、体制が強化されることは喜ばしいことであるが、新興感染症の伝播等、緊急時における現場での防疫措置や研究、ワクチン開発・生産強化等に向けた、行政、大学、官民研究機関等による平時からの連携ネットワークが脆弱であること等、我が国におけるワンヘルスの実践に向けた体制整備は、未だ不十分と言わざるをえない。
よって、国におかれては、近年、多くの人獣共通感染症が発生し、流行してきたアジア大陸の玄関口に位置する九州に、人獣共通感染症に関する予防、防疫、情報発信、調査研究等に関する機能及びこれらの取組を担う人材の育成に関する機能等を集積させ、感染症の発生等、緊急時の現場における対応力を強化するため、ワンヘルスに関わる国際機関や各県の地方衛生研究所等との連携を含めたより大きなネットワークのハブとなり、国立健康危機管理研究機構の現場対応機能の一翼を担う「アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)」を早期に設置することを強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年12月19日
福岡県議会議長 香 原 勝 司
衆議院議長 | 額賀福志郎殿 |
参議院議長 | 関口昌一殿 |
内閣総理大臣 | 石破 茂殿 |
厚生労働大臣 | 福岡資麿殿 |
農林水産大臣 | 江藤 拓殿 |
環境大臣 | 浅尾慶一郎殿 |